変異KRASを標的とした新たな癌治療時代の現状と展望~癌シグナルから考える耐性メカニズムとそれを克服するコンビネーション治療

「要旨」最近, 変異KRAS G12Cを選択的に阻害するソトラシブとアダグラシブの有効性が臨床試験で証明され, 臨床応用された. この薬剤は非小細胞肺癌に対して高い奏効率を示すが, その効果が長続きしないことや, 大腸癌では肺癌より効果が劣ることも報告された. 長年治療標的にならなかった変異KRASが治療標的となり得ることが証明されたのとほぼ同時に, その耐性機構の存在が明らかになった. 変異KRAS阻害剤の耐性シグナルを制御する分子としては, EGFR, SHP2, MEK, BCL-XLなどが報告されおり, これらの分子の同時阻害するコンビネーション治療により, 変異KRAS阻害剤の治療効...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 71; no. 6; pp. 383 - 392
Main Authors 片岡, 将宏, 中村, 聡, 小山, 誠, 副島, 雄二, 本藤, 奈緒, 宮﨑, 暁, 北沢, 将人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 10.12.2023
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ISSN0037-3826
1884-6580
DOI10.11441/shinshumedj.71.383

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Summary:「要旨」最近, 変異KRAS G12Cを選択的に阻害するソトラシブとアダグラシブの有効性が臨床試験で証明され, 臨床応用された. この薬剤は非小細胞肺癌に対して高い奏効率を示すが, その効果が長続きしないことや, 大腸癌では肺癌より効果が劣ることも報告された. 長年治療標的にならなかった変異KRASが治療標的となり得ることが証明されたのとほぼ同時に, その耐性機構の存在が明らかになった. 変異KRAS阻害剤の耐性シグナルを制御する分子としては, EGFR, SHP2, MEK, BCL-XLなどが報告されおり, これらの分子の同時阻害するコンビネーション治療により, 変異KRAS阻害剤の治療効果増強や耐性克服に寄与できる可能性が示唆される. G12Cの次にはG12D変異を標的とする薬剤MRTX1133が開発され, さらには全ての12コドン変異を標的としたG12X阻害剤や全ての変異KRASを標的とした汎KRAS阻害剤の研究が進行中である. 変異KRASと耐性シグナルを標的としたコンビネーション治療が癌治療の新たな変革をもたらす可能性が高いと期待される.
ISSN:0037-3826
1884-6580
DOI:10.11441/shinshumedj.71.383