肝外側区域が脱出した腹壁瘢痕ヘルニアの1例

腹壁瘢痕ヘルニアは開腹術後合併症の1つで,通常診療でもよく経験する.今回,腹壁瘢痕ヘルニアの内容物としては稀な肝外側区域が脱出した症例を経験したので報告する. 症例は80歳代,女性.腹部膨隆を主訴に受診した. 30年前に胆石で開腹手術の既往があった.CT検査を行ったところ上腹部に2ヵ所の腹壁瘢痕ヘルニアを認め,肝外側区域と横行結腸が脱出していた.疼痛など症状は認めなかったが嵌頓のリスクがあり手術となった.全身麻酔下腹腔鏡下手術が施行された.術中所見では肝円索が腹壁および脱出していた横行結腸間膜と癒着していた.乏しい三角間膜形成により肝外側区域が肝円索に引っ張られるように吊り上がり脱出したと考え...

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Published in山口医学 Vol. 71; no. 1; pp. 25 - 28
Main Authors 久我, 貴之, 重田, 匡利, 矢野, 由香, 河内, 隆将
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 22.02.2022
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ISSN0513-1731
1880-4462
DOI10.2342/ymj.71.25

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Summary:腹壁瘢痕ヘルニアは開腹術後合併症の1つで,通常診療でもよく経験する.今回,腹壁瘢痕ヘルニアの内容物としては稀な肝外側区域が脱出した症例を経験したので報告する. 症例は80歳代,女性.腹部膨隆を主訴に受診した. 30年前に胆石で開腹手術の既往があった.CT検査を行ったところ上腹部に2ヵ所の腹壁瘢痕ヘルニアを認め,肝外側区域と横行結腸が脱出していた.疼痛など症状は認めなかったが嵌頓のリスクがあり手術となった.全身麻酔下腹腔鏡下手術が施行された.術中所見では肝円索が腹壁および脱出していた横行結腸間膜と癒着していた.乏しい三角間膜形成により肝外側区域が肝円索に引っ張られるように吊り上がり脱出したと考えられた.2ヵ所のヘルニア門に対し各々メッシュを用い修復術が行われた. 近年腹腔鏡を用いたメッシュによる修復術が増加しており,利点として腹腔内の詳細な観察が可能,術後の感染や疼痛が少ないなどの利点があげられる.今回の症例においても2ヵ所のヘルニア門の位置関係などの詳細な観察が可能であり腹腔鏡下手術は有用であった.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.71.25