肺癌との鑑別が困難であった肺放線菌症の1例

背景.肺放線菌症は気管支鏡検査での診断率は低いとされる.症例. 52歳,女性. 2008年12月より乾性咳嗽を生じ,その後2009年3月に発熱,黄色痰が出現し,同年4月に左胸部に違和感を感じ,近医を受診した.胸部X線写真では,左胸部に異常陰影を認めた.細菌性肺炎の治癒過程を疑い経過観察していたが同年7月に陰影増大を認め,肺癌が否定できないため,当院へ紹介となった.気管支鏡検査を行ったが,気管支擦過,洗浄液の細胞診は陰性であった.細菌学検査も異常所見を認めなかった.胸部CT画像上,肺癌,慢性炎症性疾患などが疑われ,ペニシリン系抗菌薬の点滴投与を約2週間施行するも陰影消失を認めなかった.肺癌の否定...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 36; no. 5; pp. 475 - 480
Main Authors 笠原, 寿郎, 小林, 弘明, 岡崎, 彰仁, 米田, 太郎, 白崎, 浩樹, 渡辺, 知志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2014
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.36.5_475

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Summary:背景.肺放線菌症は気管支鏡検査での診断率は低いとされる.症例. 52歳,女性. 2008年12月より乾性咳嗽を生じ,その後2009年3月に発熱,黄色痰が出現し,同年4月に左胸部に違和感を感じ,近医を受診した.胸部X線写真では,左胸部に異常陰影を認めた.細菌性肺炎の治癒過程を疑い経過観察していたが同年7月に陰影増大を認め,肺癌が否定できないため,当院へ紹介となった.気管支鏡検査を行ったが,気管支擦過,洗浄液の細胞診は陰性であった.細菌学検査も異常所見を認めなかった.胸部CT画像上,肺癌,慢性炎症性疾患などが疑われ,ペニシリン系抗菌薬の点滴投与を約2週間施行するも陰影消失を認めなかった.肺癌の否定はできず,診断と治療をかねて左上葉切除術を施行した.切除標本の病理組織学的所見から硫黄顆粒を認め,肺放線菌症と診断した.検体嫌気性培養では放線菌の同定はできなかった.結論.孤立する胸部陰影を認める際は肺放線菌症の存在を念頭におく必要があると考えられた.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.36.5_475