川野ら"気管支分岐異常を伴った右肺上葉切除術後の中葉軸捻転の1例"

本症例報告において川野らは, 比較的まれな気管支分岐異常(気管支転位)の症例における, 比較的まれな中葉軸捻転の合併とその治療を報告している. 気管支分岐異常があるとむしろ通常より中葉軸捻転が発症しやすい可能性が示唆されている. 本症例では下葉の拡張が良好であり, 中葉は拡張した下葉の背側にまで回り込んでおり, 大変興味深い. 中葉の軸捻転は右肺上葉切除術後にみられる比較的まれな合併症の1つで1,2, 上葉切除術後に中葉が自然に捻転する条件として, 上中葉間の不完全分葉と中下葉間の完全分葉が挙げられる. 上中葉間の切離に際し中葉に切り込むような自動縫合切離を行うと, 中葉は縦隔方向に90°捻転...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 35; no. 5; pp. 479 - 480
Main Author 矢野, 智紀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2013
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.35.5_479

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Summary:本症例報告において川野らは, 比較的まれな気管支分岐異常(気管支転位)の症例における, 比較的まれな中葉軸捻転の合併とその治療を報告している. 気管支分岐異常があるとむしろ通常より中葉軸捻転が発症しやすい可能性が示唆されている. 本症例では下葉の拡張が良好であり, 中葉は拡張した下葉の背側にまで回り込んでおり, 大変興味深い. 中葉の軸捻転は右肺上葉切除術後にみられる比較的まれな合併症の1つで1,2, 上葉切除術後に中葉が自然に捻転する条件として, 上中葉間の不完全分葉と中下葉間の完全分葉が挙げられる. 上中葉間の切離に際し中葉に切り込むような自動縫合切離を行うと, 中葉は縦隔方向に90°捻転する. この状態で, 中下葉間が完全分葉であれば中葉の自由度が高く, その後の操作や左側臥位から背臥位への体位変換によって, この90°捻転した中葉はさらに背側に90°捻転し, 180°の捻転となる. 90°の捻転であれば, 保存的治療で経過する可能性があるが2,3, 本症例では気管支分岐異常を伴っており, 右主気管支からS6が分岐するまでの距離が長く, 上葉は大きく, 下葉は小さいという, まさに捻転の起こりやすい状況下にあったことを, 著者らも言及している.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.35.5_479