多発する結節,腫瘤状陰影を呈し空洞内を直接観察しえた肺アスペルギルス症の1例

症例. 47歳,男性. 2012年6月,悪性リンパ腫の化学療法中に左上葉に空洞を伴った結節状陰影が出現した.経過観察していたところ,さらに結節状陰影が両側の肺に多数出現し,一部は増大し腫瘤状陰影となり,空洞を伴うようになった. 2012年8月に発熱を認め,精査加療のため入院した.入院時,右下葉の腫瘤状陰影は径5cm大であり,内部に球状陰影を伴っていた.血清アスペルギルス抗原は陽性,β-D-glucanは6.0未満であった.気管支鏡検査では右下葉B^8aの気管支から直接空洞内に内視鏡を挿入しえた.空洞壁は白色の薄い粘液に覆われており,内部には表面が凸凹で銀色の分泌物に覆われた充実性物質が観察され...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 35; no. 5; pp. 499 - 505
Main Authors 中鉢, 正太郎, 寺嶋, 毅, 堀尾, 穣治, 松崎, 達, 富岡, 枝里, 坂巻, 文雄, 佐藤, 美奈子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2013
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.35.5_499

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Summary:症例. 47歳,男性. 2012年6月,悪性リンパ腫の化学療法中に左上葉に空洞を伴った結節状陰影が出現した.経過観察していたところ,さらに結節状陰影が両側の肺に多数出現し,一部は増大し腫瘤状陰影となり,空洞を伴うようになった. 2012年8月に発熱を認め,精査加療のため入院した.入院時,右下葉の腫瘤状陰影は径5cm大であり,内部に球状陰影を伴っていた.血清アスペルギルス抗原は陽性,β-D-glucanは6.0未満であった.気管支鏡検査では右下葉B^8aの気管支から直接空洞内に内視鏡を挿入しえた.空洞壁は白色の薄い粘液に覆われており,内部には表面が凸凹で銀色の分泌物に覆われた充実性物質が観察された.空洞壁の生検検体ではアスペルギルスの菌糸が多数観察された.空洞内物質の生検検体は大部分が壊死組織であったが,少数のアスペルギルスの菌糸も観察された.空洞内の気管支洗浄液および空洞内物質の生検検体の培養にてAspergillus fumigatusが認められた.経過,画像所見,内視鏡所見より侵襲性肺アスペルギルス症と診断された. Itraconazole経口投与から入院後にCaspofunginの経静脈投与に変更し,さらにVoriconazoleの内服投与に変更し肺病変の進行は制御された.しかしながら,原病の進行のため12月に永眠された.結論.亜急性の経過で肺内に多発性の結節,腫瘤状陰影を呈した症例を経験した.気管支鏡検査を施行し病理学的および培養検査により侵襲性肺アスペルギルス症と診断された.その際に空洞内部を直接観察することができた貴重な症例と考えられた.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.35.5_499