COPD患者における肺機能評価の有用性 : どこまで役に立つのか(第25回日本気管支学会総会)

COPDの診断や重症度の判定は肺機能検査で行われており, 従来, 静的肺気量分画, 1秒量/1秒率, フローボリューム曲線, 拡散能が用いられてきた. これらの検査はいずれも患者の最大限に近い努力を必要とするため, 低肺機能のCOPD患者にとっては施行にかなりの困難があることが多い. そのため, 患者の努力を要しない検査の開発が期待されており, 当科で行っている新しい検査法について紹介する. 被検者の努力を小さくして閉塞性障害の評価を行うために, ボディボックスを用いてほぼ安静呼吸で気道抵抗を測定する方法が開発されている. この方法で, 小学生から80歳台の高齢者まで呼吸器疾患患者を含めほとん...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 24; no. 3; p. 179
Main Author 栂, 博久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2002
日本気管支学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.24.3_179_1

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Summary:COPDの診断や重症度の判定は肺機能検査で行われており, 従来, 静的肺気量分画, 1秒量/1秒率, フローボリューム曲線, 拡散能が用いられてきた. これらの検査はいずれも患者の最大限に近い努力を必要とするため, 低肺機能のCOPD患者にとっては施行にかなりの困難があることが多い. そのため, 患者の努力を要しない検査の開発が期待されており, 当科で行っている新しい検査法について紹介する. 被検者の努力を小さくして閉塞性障害の評価を行うために, ボディボックスを用いてほぼ安静呼吸で気道抵抗を測定する方法が開発されている. この方法で, 小学生から80歳台の高齢者まで呼吸器疾患患者を含めほとんどの対象で気道抵抗の測定が可能であり, 得られた測定値や性年齢分布も従来のパンティング法と同等であった. COPD患者はしばしば安静呼気時にもフローリミテーションを来たし, 分時換気量の制限因子となっている. 安静呼気時口元に3~10cmH2Oの陰圧を負荷する(negative expiratory pressure, NEP)と, 健常者では見られるフローの増加がCOPDでは見られないことがあり, ほとんど努力なしでフローリミテーションを検出することが出来る. COPDの重症度や検査時の体位でフローリミテーションの状態が異なることがわかり, 病態生理の一端も考察することが出来た. また, 喘息発作時や人工呼吸中の患者の閉塞性障害の評価にも使いうる可能性をもっている. COPDが重症になればなるほど必要な肺機能検査を完遂することが困難となることが, 現在の肺機能評価の問題点であり限界である. より安静に近い生理的な条件下での検査や, 画像では得られないCOPDの病態生理に迫る可能性のある検査の開発が期待される.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.24.3_179_1