人工内耳手術を施行した前庭水管拡大症における平衡機能の検討
前庭水管拡大症は反復するめまい発作と進行性難聴を伴う疾患である. 難聴とともに平衡機能障害が潜在的に存在することが予想され, 難聴が進行し人工内耳手術の適応となった場合, 残存する平衡機能が術側決定において一つの重要な因子となるが, これまで平衡機能について検討した報告は少ない. 今回われわれは1999年~2016年までに当科で人工内耳埋込み術を行った前庭水管拡大症患者13例26耳につき, 平衡機能を温度刺激検査および前庭誘発頸筋電位 (cVEMP) を用いて評価し, 臨床所見との相関を検討した. 温度刺激検査は11名21耳に施行し, 両側無反応例が2名, 一側無反応または低下例が3名, 合計...
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Published in | 日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 6; pp. 791 - 798 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
20.06.2018
日本耳鼻咽喉科学会 |
Subjects | |
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ISSN | 0030-6622 1883-0854 |
DOI | 10.3950/jibiinkoka.121.791 |
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Summary: | 前庭水管拡大症は反復するめまい発作と進行性難聴を伴う疾患である. 難聴とともに平衡機能障害が潜在的に存在することが予想され, 難聴が進行し人工内耳手術の適応となった場合, 残存する平衡機能が術側決定において一つの重要な因子となるが, これまで平衡機能について検討した報告は少ない. 今回われわれは1999年~2016年までに当科で人工内耳埋込み術を行った前庭水管拡大症患者13例26耳につき, 平衡機能を温度刺激検査および前庭誘発頸筋電位 (cVEMP) を用いて評価し, 臨床所見との相関を検討した. 温度刺激検査は11名21耳に施行し, 両側無反応例が2名, 一側無反応または低下例が3名, 合計21耳中7耳33.3%に機能障害を認めた. 一方 cVEMP は12名23耳に施行し, 一側の反応低下を1名, 23耳中1耳4.3%に機能障害を認め, 症例全体では38.7%に cVEMP または温度刺激検査に異常所見を認めた. めまい発作の既往があった6名中5名に平衡機能障害を認めたのに対し, 既往がない7名は平衡機能障害を認めず, めまい発作と平衡機能障害には有意な相関があった. 聴力レベル, 難聴の進行, 前庭水管径と平衡機能障害に相関はなかった. 前庭水管拡大症患者では4割に平衡機能障害を認めることから, 人工内耳術前の平衡機能検査は重要であり, 特にめまいの既往がある症例では必須と考えられた. |
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ISSN: | 0030-6622 1883-0854 |
DOI: | 10.3950/jibiinkoka.121.791 |