鼻内視鏡手術後に診断された悪性腫瘍症例の臨床的検討と術前検査に関するアンケート調査

慢性副鼻腔炎をはじめとする鼻副鼻腔疾患への内視鏡手術 (以下 ESS) は一般的になっている. しかしながら良性疾患の術前診断のもとに ESS が行われ, 術後に悪性腫瘍と判明するケースも存在し, 患者に不利益を発生させている可能性がある. 今回われわれは, ESS 術後に悪性腫瘍と診断された症例を対象に, 術前における特徴的な所見を見出すことができるのかを探索する目的で後向きに患者背景・術前検査の有無・所見について検討を行った. また鼻副鼻腔悪性腫瘍は片側性病変として指摘されることが多いため, 片側性病変の術前検査の取り扱いについて当教室の関連病院に勤務する医師に匿名でのアンケート調査を行っ...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 7; pp. 899 - 904
Main Authors 武田, 和也, 江口, 博孝, 前田, 陽平, 端山, 昌樹, 津田, 武, 猪原, 秀典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.07.2018
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.121.899

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Summary:慢性副鼻腔炎をはじめとする鼻副鼻腔疾患への内視鏡手術 (以下 ESS) は一般的になっている. しかしながら良性疾患の術前診断のもとに ESS が行われ, 術後に悪性腫瘍と判明するケースも存在し, 患者に不利益を発生させている可能性がある. 今回われわれは, ESS 術後に悪性腫瘍と診断された症例を対象に, 術前における特徴的な所見を見出すことができるのかを探索する目的で後向きに患者背景・術前検査の有無・所見について検討を行った. また鼻副鼻腔悪性腫瘍は片側性病変として指摘されることが多いため, 片側性病変の術前検査の取り扱いについて当教室の関連病院に勤務する医師に匿名でのアンケート調査を行ったので併せて報告する. 対象は2001年1月から2016年12月の間に, 大阪大学医学部附属病院を受診した鼻副鼻腔悪性腫瘍患者のうち, 当院以外で実施されたものも含む ESS で術中または術後に診断がついた15例とした. 今回の結果において, 術前の MRI は8例, 生検は5例のみでしか実施されていなかった. MRI に関しては全例でT2強調画像での低信号領域という共通性を見出すことができた. この点に着目し悪性腫瘍が疑われる場合には生検を実施するべきであると考えられた. またアンケート調査での結果からそれらの検査の必要性が十分に認識されていないことが示唆された. 今後, 片側性副鼻腔病変の診療における生検, MRI の重要性を啓発する必要がある.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.121.899