頸部神経鞘腫手術症例の検討

頸部神経鞘腫に対する手術は, 神経温存を目指した被膜間摘出術など, そのほかの一般的な頸部腫瘍に対する術式とは異なった手技を要する. 今回, 2000~2016年の間に当科で手術を施行した頸部神経鞘腫の12例について臨床的検討を行い報告する. 男性, 女性それぞれ6例ずつで, 平均年齢は46歳 (14~81歳) であった. 起源神経は, 迷走神経が4例と最多で, 交感神経, 腕神経叢がそれぞれ2例, 舌下神経, 鎖骨上神経がそれぞれ1例, 不明が2例であった. 当科では, 術後 QOL に重要と考えられる神経については, 被膜間摘出術を基本とし, 温存を試みている. 頸部神経鞘腫は比較的まれな...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 121; no. 5; pp. 673 - 678
Main Authors 脇坂, 浩之, 鵜久森, 徹, 能田, 淳平, 羽藤, 直人, 眞田, 朋昌, 川元, 日向子, 三谷, 壮平
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.05.2018
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.121.673

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Summary:頸部神経鞘腫に対する手術は, 神経温存を目指した被膜間摘出術など, そのほかの一般的な頸部腫瘍に対する術式とは異なった手技を要する. 今回, 2000~2016年の間に当科で手術を施行した頸部神経鞘腫の12例について臨床的検討を行い報告する. 男性, 女性それぞれ6例ずつで, 平均年齢は46歳 (14~81歳) であった. 起源神経は, 迷走神経が4例と最多で, 交感神経, 腕神経叢がそれぞれ2例, 舌下神経, 鎖骨上神経がそれぞれ1例, 不明が2例であった. 当科では, 術後 QOL に重要と考えられる神経については, 被膜間摘出術を基本とし, 温存を試みている. 頸部神経鞘腫は比較的まれな腫瘍であり術前に確定診断を得られないことが多いが, 術前の画像検査での腫瘍の形状や部位は, 神経鞘腫を疑う上で重要な所見であると考えられた. 被膜間摘出術を施行した9例中5例 (56%) に術後神経脱落症状を生じた (永続性麻痺4例, 一過性麻痺1例) が, 特に腫瘍が舌骨より高位である副咽頭間隙に存在した症例で80% (4/5例) と高率であった. 舌骨より高位に存在する神経鞘腫では, 術後神経脱落症状を生じる可能性が高いことを考慮した上で, 慎重に手術適応を検討する必要がある. また, 神経温存を目指して被膜間摘出術を行う際には, 神経上膜の切開部位に注意を要する.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.121.673