多焦点眼内レンズ挿入後に単焦点眼内レンズへの入れ替えが行われた鞍結節部髄膜腫の1例

多焦点眼内レンズ挿入後に単焦点眼内レンズへの入れ替えが行われた鞍結節部髄膜腫の1例を報告する.症例は60歳の女性,右眼の霧視を主訴に近医を受診し,後嚢下白内障を指摘され,右眼白内障手術(多焦点眼内レンズ挿入)が施行された.術翌日にも右眼の霧視は軽快しておらず,その後,単焦点眼内レンズへの入れ替えが施行されるも改善はなかった.当院初診時,視力は右眼(0.8),左眼(1.5),限界フリッカ値(CFF)は右眼12 Hz,左眼35 Hz,相対的瞳孔求心路障害は右眼陽性であった.視野検査では右眼は中心暗点と上鼻側の垂直ステップ,左眼は上耳側の垂直ステップがみられ,接合部暗点および左同名半盲様の所見を呈し...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in神経眼科 Vol. 38; no. 4; pp. 373 - 381
Main Authors 三木, 淳司, 荒木, 俊介, 後藤, 克聡, 桐生, 純一, 眞鍋, 優, 三戸, 裕美, 宇野, 昌明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経眼科学会 25.12.2021
Online AccessGet full text
ISSN0289-7024
2188-2002
DOI10.11476/shinkeiganka.38.373

Cover

More Information
Summary:多焦点眼内レンズ挿入後に単焦点眼内レンズへの入れ替えが行われた鞍結節部髄膜腫の1例を報告する.症例は60歳の女性,右眼の霧視を主訴に近医を受診し,後嚢下白内障を指摘され,右眼白内障手術(多焦点眼内レンズ挿入)が施行された.術翌日にも右眼の霧視は軽快しておらず,その後,単焦点眼内レンズへの入れ替えが施行されるも改善はなかった.当院初診時,視力は右眼(0.8),左眼(1.5),限界フリッカ値(CFF)は右眼12 Hz,左眼35 Hz,相対的瞳孔求心路障害は右眼陽性であった.視野検査では右眼は中心暗点と上鼻側の垂直ステップ,左眼は上耳側の垂直ステップがみられ,接合部暗点および左同名半盲様の所見を呈した.光干渉断層計の乳頭周囲網膜神経線維層解析では,右眼は乳頭耳側,左眼は乳頭の耳側も含めた両眼の水平象限で菲薄化していた.頭部・眼窩MRIでは,トルコ鞍上部に境界明瞭な腫瘤性病変がみられ,鞍結節部髄膜腫による圧迫性視神経症と診断された.腫瘍摘出術後,右眼視力は(1.5),CFFは33 Hzと改善し,両眼の視野異常も著明に改善した.髄膜腫でも進行性で左右差のある視機能および構造変化を呈するため,白内障術前・術後の評価においても頭蓋内疾患の可能性を念頭に置く必要があり,多焦点眼内レンズの入れ替えには慎重を期すべきである.
ISSN:0289-7024
2188-2002
DOI:10.11476/shinkeiganka.38.373