後期高齢者の前立腺がんスクリーニングの重要性

目的:前立腺がんは典型的な男性高齢者がんである.日本では,2020年には男性のがんのなかで第1位になることが予測されている.我が国は,増加する高齢者に対応するために,新たに後期高齢者の医療保険制度を2008年4月にスタートさせ,75歳以上の者が後期高齢者と定義された.今回,後期高齢男性の前立腺がんの特性を明らかにする目的で,前立腺がん患者を調査した. 方法:対象は2002年1月から2012年12月までに黒沢病院で発見された前立腺がん患者612人のうち,予後分類が可能であった436人と病理学的分類の検討が可能であった472人である.予後分類(検診発見群および外来発見群)と病理学的分類について,7...

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Published in人間ドック Vol. 30; no. 3; pp. 570 - 573
Main Authors 狩野, 臨, 黒澤, 功, 小倉, 治之, 戸塚, 真弓, 熊坂, 文成, 石井, 秀和, 加瀬, 嘉明, 島田, 和子, 曲, 友弘, 山中, 英壽
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本人間ドック学会 2015
日本人間ドック学会
Subjects
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ISSN1880-1021
2186-5027
DOI10.11320/ningendock.30.570

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Summary:目的:前立腺がんは典型的な男性高齢者がんである.日本では,2020年には男性のがんのなかで第1位になることが予測されている.我が国は,増加する高齢者に対応するために,新たに後期高齢者の医療保険制度を2008年4月にスタートさせ,75歳以上の者が後期高齢者と定義された.今回,後期高齢男性の前立腺がんの特性を明らかにする目的で,前立腺がん患者を調査した. 方法:対象は2002年1月から2012年12月までに黒沢病院で発見された前立腺がん患者612人のうち,予後分類が可能であった436人と病理学的分類の検討が可能であった472人である.予後分類(検診発見群および外来発見群)と病理学的分類について,75歳以上と75歳未満とに分け悪性度を検討した.予後分類としてはUICC分類(第7版,2009年)を使用し,病理学的分類としてはグリーソン・スコアを使用した. 結果:後期高齢者において,浸潤がん+転移がん(Ⅲ群+Ⅳ群)の割合は検診発見群では33.3%,外来発見群では47.1%であった.一方,75歳未満においては,検診発見群では18.4%,外来発見群では33.6%であった.すなわち,外来発見群は後期高齢者の浸潤がん+転移がんの割合は,75歳未満群のそれに比較して有意に高かった(p<0.05).PSA 10ng/mL未満群,PSA10~50ng/mL未満群において,後期高齢者のグリーソン・スコアは75歳未満のそれに比較して有意に高かった(p<0.05).すなわち,後期高齢者のがんは75歳未満のがんに比較して悪性度が高かった. 結論:今回の我々の結果は,75歳未満の男性と同様に,後期高齢者の前立腺がん検診の重要性を示唆している.
ISSN:1880-1021
2186-5027
DOI:10.11320/ningendock.30.570