ヒトの進化と歯科医学とその文化性

「はじめに」どうして人間の歯と口腔が, 医学とは別に存在しなければならなくなったのか. この疑問は母校の九州歯科大学に入学した時からの私の疑問であった. 明治39(1906)年に制定された歯科医師法と医師法によって歯科医師と医師の身分と業務が法的に規制されることになった. それ以来, 100年に近い年月が経っているので, 今となっては, その時の正確な事情や経緯は分からない. 当時のことを書物で読んだり, 現在の歯科に関する制度や歴史を辿って知るだけである. 歯科医療に携わる方々には医学, 歯学二元論的制度を疑問視している人たちと, 当然のこととして受け取っている人たちがおられると思う. しか...

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Published in九州歯科学会雑誌 Vol. 59; no. 1; pp. 1 - 13
Main Author 都, 温彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 九州歯科学会 2005
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ISSN0368-6833
1880-8719
DOI10.2504/kds.59.1_1

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Summary:「はじめに」どうして人間の歯と口腔が, 医学とは別に存在しなければならなくなったのか. この疑問は母校の九州歯科大学に入学した時からの私の疑問であった. 明治39(1906)年に制定された歯科医師法と医師法によって歯科医師と医師の身分と業務が法的に規制されることになった. それ以来, 100年に近い年月が経っているので, 今となっては, その時の正確な事情や経緯は分からない. 当時のことを書物で読んだり, 現在の歯科に関する制度や歴史を辿って知るだけである. 歯科医療に携わる方々には医学, 歯学二元論的制度を疑問視している人たちと, 当然のこととして受け取っている人たちがおられると思う. しかし, 医学部の人は歯科医学の内容や事情がよく分からない, 歯学部の人は医学の内容や事情がよく分からない, という情況がある. 近くて遠い仲である. 世間一般の人たちも歯科医学がどのような学問であるのか, よく分からないのが実状であろう. ひょっとすると歯学を志す歯学生も分からないのではないか, と思っている. 医学と歯学とは同じ医学の名が付けられて別個に存在しているので, 何か分かれる理由があるのではないかと思うであろう.
ISSN:0368-6833
1880-8719
DOI:10.2504/kds.59.1_1