分子標的治療薬登場による炎症性腸疾患治療の革命

炎症性腸疾患に対する治療は従来,副腎皮質ステロイド,チオプリン製剤,カルシニューリン阻害薬による非特異的な腸管免疫の抑制が中心であったが,1993年に世界で初めて抗TNFα抗体製剤の有効性がクローン病患者で報告され,その後20年余りの間に抗TNFα抗体製剤は炎症性腸疾患の疾患概念や治療ストラテジーを大きく変えた。さらに新規分子標的治療薬が次々と開発され,現在では抗接着分子抗体や抗IL-12/23p40抗体,低分子化合物ヤヌスキナーゼ阻害薬など,様々な作用機序を有する薬剤が選択可能となった。基本治療薬においても5-アミノサリチル酸製剤やブデソニド製剤の選択肢が増え,チオプリン製剤についてはNUD...

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Published inJOURNAL OF THE KYORIN MEDICAL SOCIETY Vol. 52; no. 4; pp. 199 - 205
Main Author 齋藤, 大祐
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 杏林医学会 28.12.2021
The Kyorin Medical Society
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ISSN0368-5829
1349-886X
DOI10.11434/kyorinmed.52.199

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Summary:炎症性腸疾患に対する治療は従来,副腎皮質ステロイド,チオプリン製剤,カルシニューリン阻害薬による非特異的な腸管免疫の抑制が中心であったが,1993年に世界で初めて抗TNFα抗体製剤の有効性がクローン病患者で報告され,その後20年余りの間に抗TNFα抗体製剤は炎症性腸疾患の疾患概念や治療ストラテジーを大きく変えた。さらに新規分子標的治療薬が次々と開発され,現在では抗接着分子抗体や抗IL-12/23p40抗体,低分子化合物ヤヌスキナーゼ阻害薬など,様々な作用機序を有する薬剤が選択可能となった。基本治療薬においても5-アミノサリチル酸製剤やブデソニド製剤の選択肢が増え,チオプリン製剤についてはNUDT15遺伝子多型検査による副作用リスクスクリーニングが確立されるなど新たなエビデンスが構築されつつある。さらに長期予後の改善が重要視されるようになり,新たな治療戦略として具体的な治療目標を設定したtreat to targetの重要性が唱えられるようになった。いっぽうで,各薬剤の好適症例の設定,適切なモニタリングの確立など解決すべき課題も残っている。
ISSN:0368-5829
1349-886X
DOI:10.11434/kyorinmed.52.199