歩行時の足底圧に着目した中高年転倒経験者の特徴評価

【目的】地面に唯一接している足底部はヒトの移動動作や姿勢制御を支持する役割を担っていることから,本研究では,歩行時足底圧の時系列データに着目し,転倒経験者と非転倒経験者における特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】転倒は女性に多く発生することから,女性30 名(転倒歴22 名:59.64 ± 8.89 歳,転倒歴あり8 名:61.88 ± 8.29 歳)を対象に足底圧計測装置F-scan Ⅱシステムを用いて10m の歩行計測を実施した。まず計測により得られた足底圧データの平均と偏差のデータを求めた。次に,時間正規化された足底圧値から構成された300 × 357(5 試行× 2(左右足デー...

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Published in日本転倒予防学会誌 Vol. 5; no. 3; pp. 43 - 53
Main Authors 持丸, 正明, 多田, 充徳, 中嶋, 香奈子, 小林, 吉之
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本転倒予防学会 10.03.2019
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ISSN2188-5702
2188-5710
DOI10.11335/tentouyobou.5.3_43

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Summary:【目的】地面に唯一接している足底部はヒトの移動動作や姿勢制御を支持する役割を担っていることから,本研究では,歩行時足底圧の時系列データに着目し,転倒経験者と非転倒経験者における特徴を明らかにすることを目的とした。【方法】転倒は女性に多く発生することから,女性30 名(転倒歴22 名:59.64 ± 8.89 歳,転倒歴あり8 名:61.88 ± 8.29 歳)を対象に足底圧計測装置F-scan Ⅱシステムを用いて10m の歩行計測を実施した。まず計測により得られた足底圧データの平均と偏差のデータを求めた。次に,時間正規化された足底圧値から構成された300 × 357(5 試行× 2(左右足データ)× 30 名,足底部7 領域× 51 点)の行列データセットを主成分分析にかけ,出力された第1 から第36 主成分までの各主成分得点について,転倒経験を要因としたt 検定で有意差検定を行った。さらに,主成分得点と参加者の基本情報,歩行の時間空間パラメータ,最大足底圧との相関係数を求め,足底圧の変位特徴の理解に用いた。加えて,対象群ごとの足底圧データの特徴を把握するために得られた主成分に関連する足底圧波形の再構築を行った。【結果】足底圧の平均と偏差を求めた結果では,平均値に群間の大きな差は見られなかったが,偏差においては立脚後期の前足部足底圧に差が見られた。さらに,主成分分析の結果,第1 ,8 ,10 主成分に転倒経験の主効果が示された(p < 0.05)。これらの主成分得点と他の評価パラメータとの相関関係の結果と,得られた主成分に関連する再構築波形の比較により,転倒経験者では非転倒経験者よりも立脚期中の踵とつま先の位置の足圧値が低値となること,反対に高値を示す足底箇所が見られた。また,足底圧波形全体の形状においてもデータの出力傾向が異なり,出力ピーク位置のずれなどの変動差が見られた。【結論】本研究の結果から,主成分分析を用いることにより足底圧のピーク値や平均値などの単一的な評価パラメータだけではなく全体的な波形の評価ができ,歩行中の足の接地戦略の違いから転倒経験者と非転倒経験者の歩行時足底圧変化の特徴差を示していることがわかった。上記の主成分の観点から,歩行時の足底圧特徴を検知することにより,転倒経験を持つ者に近い対象者を抽出できる可能性が示唆された。
ISSN:2188-5702
2188-5710
DOI:10.11335/tentouyobou.5.3_43