発作性心房細動の合併により全身性血栓症の診断に難渋したヘパリン起因性血小板減少症の一例

【症例】 84歳,女性。転倒を契機に右橈骨遠位端骨折を受傷し,手術目的で入院となった。弁膜症性発作性心房細動の塞栓症予防目的で抗血栓療法としてワルファリンカリウム内服中であったため,周術期に未分画ヘパリン持続点滴静注への移行を必要とした。術後6日目より右下肢疼痛と色調不良が出現,十二誘導心電図では入院時には認めなかった心房細動を,経胸壁心臓超音波検査では左房内血栓を認めた。以上の経過から発作性心房細動に伴う右下肢動脈塞栓症を疑った。しかし精査目的で施行した造影CTで両側肺動脈血栓を認めた。動静脈に同時に血栓の存在を認め,心原性塞栓では説明できない全身性血栓症であり,ヘパリン使用後からの著明な血...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 44; no. 3; pp. 137 - 143
Main Authors 林, 明生, 南, 圭祐, 佐藤, 如雄, 原田, 智雄, 高井, 学, 大宮, 一人, 明石, 嘉浩
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2016
聖マリアンナ医科大学医学会
St. Marianna University Society of Medical Science
Subjects
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ISSN0387-2289
2189-0285
DOI10.14963/stmari.44.137

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Summary:【症例】 84歳,女性。転倒を契機に右橈骨遠位端骨折を受傷し,手術目的で入院となった。弁膜症性発作性心房細動の塞栓症予防目的で抗血栓療法としてワルファリンカリウム内服中であったため,周術期に未分画ヘパリン持続点滴静注への移行を必要とした。術後6日目より右下肢疼痛と色調不良が出現,十二誘導心電図では入院時には認めなかった心房細動を,経胸壁心臓超音波検査では左房内血栓を認めた。以上の経過から発作性心房細動に伴う右下肢動脈塞栓症を疑った。しかし精査目的で施行した造影CTで両側肺動脈血栓を認めた。動静脈に同時に血栓の存在を認め,心原性塞栓では説明できない全身性血栓症であり,ヘパリン使用後からの著明な血小板減少を伴っていたことからヘパリン起因性血小板減少症(HIT: heparin-induced thrombocytopenia)を疑い,未分化ヘパリン持続点滴静注の使用を中止し,アルガトロバンへ変更した。また経過中にHIT抗体高値を確認しHIT (type II) と確定診断した。抗血栓療法変更後,動静脈血栓は消失し皮膚色調不良も改善したため,ワルファリンカリウム内服へ移行し退院となった。【結語】 全身性血栓症の診断に難渋したHITの一例を経験した。ヘパリン使用後の全身性血栓症の鑑別として早期よりHITを疑うことが,重篤な血栓性合併症の回避に重要であると考えられた。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.44.137