高齢者総胆管嚢腫の経過観察中に発症した胆管癌の1例

要旨:症例は79歳女性,腹痛を主訴に受診した.軽度の肝機能障害,炎症反応の上昇を認め,腹部CTにて総胆管嚢腫を指摘された.抗生剤投与,補液などの保存的加療にて症状は軽快し,患者希望によりいったん退院となったが,約半年後再度腹痛を主訴に救急外来を受診した.血中アミラーゼの上昇を認め,腹部CTではgrade 1の急性膵炎像と考えられた.軽症急性膵炎と診断,保存的加療を開始し,すみやかに改善した.フォローアップのため行った腹部CTの再検にて総胆管内に隆起性病変が認められ,半年前に比べると明らかに増大傾向にあり,さらに同部位に造影効果がみられ,画像所見と基礎疾患の存在から,胆管癌の可能性が高いと考え,...

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Published inTando Vol. 24; no. 4; pp. 590 - 595
Main Authors 池上, 正, 屋良, 昭一郎, 松崎, 靖司, 片野, 素信, 斉藤, 吉史, 後藤, 悦久, 田渕, 崇文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本胆道学会 2010
Japan Biliary Association
Subjects
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ISSN0914-0077
1883-6879
DOI10.11210/tando.24.590

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Summary:要旨:症例は79歳女性,腹痛を主訴に受診した.軽度の肝機能障害,炎症反応の上昇を認め,腹部CTにて総胆管嚢腫を指摘された.抗生剤投与,補液などの保存的加療にて症状は軽快し,患者希望によりいったん退院となったが,約半年後再度腹痛を主訴に救急外来を受診した.血中アミラーゼの上昇を認め,腹部CTではgrade 1の急性膵炎像と考えられた.軽症急性膵炎と診断,保存的加療を開始し,すみやかに改善した.フォローアップのため行った腹部CTの再検にて総胆管内に隆起性病変が認められ,半年前に比べると明らかに増大傾向にあり,さらに同部位に造影効果がみられ,画像所見と基礎疾患の存在から,胆管癌の可能性が高いと考え,手術適応とした.高齢であるため,術後QOLを考慮し,術式は総胆管切除,胆嚢摘出,肝管空腸吻合術(Roux-enY)とした.胆管の切除断端は陰性であり,胆管内に径12mmの扁平隆起と,これに隣接する径10mmの乳頭状隆起を認めた.中分化型管状腺癌主体の所見であり,深達度は粘膜下層に留まっていた(pT1N0Mx,stage I).
ISSN:0914-0077
1883-6879
DOI:10.11210/tando.24.590