鈴木ら“気管・気管支内に多発する転移結節を認めた小細胞肺癌の1例”

鈴木らは, 気管・中枢気管支内腔に転移巣として多発結節が認められた小細胞肺癌の症例を報告した. 中枢気道に腫瘍が生じた場合, 良悪性多くの疾患が鑑別に挙がるが, 本症例のようにそれぞれに連続性が認められない複数の腫瘍がある内腔所見では, 気管原発では腺様嚢胞癌, カルチノイド, 転移病変では大腸癌, 腎癌などの肺以外の原発巣からの転移が考えやすい. 本報告では左主気管支内腔の結節を生検し, 小細胞肺癌の診断を得ている. 気管・中枢気管支内腔への転移の結節状・ポリープ状の肺癌転移は, 他臓器癌からの転移より稀である. 肺癌における中枢気道への転移の中では扁平上皮癌が多く, 次に腺癌となっており,...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 42; no. 3; p. 213
Main Author 前門戸, 任
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 25.05.2020
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.42.3_213

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Summary:鈴木らは, 気管・中枢気管支内腔に転移巣として多発結節が認められた小細胞肺癌の症例を報告した. 中枢気道に腫瘍が生じた場合, 良悪性多くの疾患が鑑別に挙がるが, 本症例のようにそれぞれに連続性が認められない複数の腫瘍がある内腔所見では, 気管原発では腺様嚢胞癌, カルチノイド, 転移病変では大腸癌, 腎癌などの肺以外の原発巣からの転移が考えやすい. 本報告では左主気管支内腔の結節を生検し, 小細胞肺癌の診断を得ている. 気管・中枢気管支内腔への転移の結節状・ポリープ状の肺癌転移は, 他臓器癌からの転移より稀である. 肺癌における中枢気道への転移の中では扁平上皮癌が多く, 次に腺癌となっており, 小細胞肺癌の中枢気道への多発転移の報告はほとんどない. 本症例は貴重な症例である. 本症例とは異なるが, 肺癌術後に気管内転移を来した肺腺癌症例が報告されており, 画像診断では病変がとらえ難く, こういった症例では気管支鏡検査を施行する意義が高い. 一部の報告においては気管支鏡検査が, 気管支鏡のルートに沿って悪性細胞のimplantationを促進した可能性について言及している. しかし, 中枢気道は線毛上皮と粘液によって保護され, 線毛のはたらきにより異物を排出する仕組みが備わっている. よほど気道を傷つけない限りは, 気腔側からこぼれた癌細胞が侵入できるとは思い難い. 積極的に検査を進めるべきであろう. 本症例では化学放射線療法を行い完全奏効に近い状態になり, 治癒を期待できる効果があった. ポイントは放射線照射範囲を気管全体, 気管分岐部, 左主気管支, 左下葉気管支から原発腫瘍までとしたことであろう. 本症例は小細胞肺癌であることより, 中枢気道周囲のリンパ行性の転移機序を否定できない. 声門直下からの全気管を含む照射を選択することは, 今後の同様の気管転移症例に遭遇した時には重要な選択肢となるであろう.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.42.3_213