RND型多剤排出トランスポーターの構造機能研究~輸送素過程の考察

「1. はじめに」 著者らは主にグラム陰性細菌の持つ多剤排出トランスポーターの構造および機能解析に四半世紀にわたり携わってきた. この研究の目的は, 薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)の主因のひとつである多剤排出トランスポーターによる多基質認識とその輸送機構を明らかにすることである. これは, 細胞膜を介した物質輸送という基礎的な生命現象の本質的理解へと繋がる興味ある課題であるとともに, 多剤耐性化克服へ向け門戸を拓く期待もある. 2002年著者らは多剤排出トランスポーターとしてだけでなく, 膜を介したイオンの濃度勾配を駆動力とする二次性トランスポーターとし...

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Published in生物物理 Vol. 64; no. 4; pp. 185 - 189
Main Authors 山下, 栄樹, 村上, 聡, 岡田, 有意
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2024
日本生物物理学会
Subjects
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.64.185

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Summary:「1. はじめに」 著者らは主にグラム陰性細菌の持つ多剤排出トランスポーターの構造および機能解析に四半世紀にわたり携わってきた. この研究の目的は, 薬剤耐性(Antimicrobial Resistance: AMR)の主因のひとつである多剤排出トランスポーターによる多基質認識とその輸送機構を明らかにすることである. これは, 細胞膜を介した物質輸送という基礎的な生命現象の本質的理解へと繋がる興味ある課題であるとともに, 多剤耐性化克服へ向け門戸を拓く期待もある. 2002年著者らは多剤排出トランスポーターとしてだけでなく, 膜を介したイオンの濃度勾配を駆動力とする二次性トランスポーターとしても世界初の高分解能構造解析例となった大腸菌AcrBの結晶構造解析に成功し, それはネイチャー誌の表紙を飾る業績となった. さらにその4年後, 同じく大腸菌AcrBと抗菌薬および抗がん剤との複合体結晶構造を再びネイチャー誌に発表し, 多基質認識とその輸送機構の基礎について説くことができた.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.64.185