母親血清がインタクト血小板MPHA法においてプロゾーン現象を示したNAIT症例について

NAIT(新生児同種免疫性血小板減少症)は抗HPA抗体や稀に抗HLA抗体が原因で発症する.今回,母親血清がインタクト血小板を用いたMPHA法において,プロゾーン現象を示したNAIT症例を経験した.患児は初産で,出生時の血小板数は11,000/μl.父親および母親間のリンパ球交差試験は陰性,血小板交差試験は母親の原血清で陰性,2倍∼8倍希釈で1+,16倍∼64倍希釈で2+を示し,プロゾーン現象を観察した. 母親と患児の抗HLAクラスI抗体検査は,Luminex法により実施し,陰性を示した.母親の抗HPA抗体は,血小板抽出抗原MPHA法(n=8)とMACE法で陰性を示した.また,患児の抗HPA抗体...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 55; no. 3; pp. 386 - 391
Main Authors 荒木, 延夫, 稲葉, 洋行, 馬淵, 理, 溝口, 秀昭, 前田, 真治, 森田, 庄治, 井上, 進, 西村, 千恵, 井本, しおん, 南, 裕史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2009
日本輸血・細胞治療学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1881-3011
1883-0625
DOI10.3925/jjtc.55.386

Cover

More Information
Summary:NAIT(新生児同種免疫性血小板減少症)は抗HPA抗体や稀に抗HLA抗体が原因で発症する.今回,母親血清がインタクト血小板を用いたMPHA法において,プロゾーン現象を示したNAIT症例を経験した.患児は初産で,出生時の血小板数は11,000/μl.父親および母親間のリンパ球交差試験は陰性,血小板交差試験は母親の原血清で陰性,2倍∼8倍希釈で1+,16倍∼64倍希釈で2+を示し,プロゾーン現象を観察した. 母親と患児の抗HLAクラスI抗体検査は,Luminex法により実施し,陰性を示した.母親の抗HPA抗体は,血小板抽出抗原MPHA法(n=8)とMACE法で陰性を示した.また,患児の抗HPA抗体も血小板抽出抗原MPHA法で陰性を示した. 母親血清の18種のインタクト血小板M-MPHA(magnetic-mixed passive hemagglutination)法によるpopulation studyは,18種中16種が陽性でプロゾーン現象が観察され,残る2種には陰性を示した.また,これらの陽性反応はクロロキン処理により,減弱もしくは消失した. 今回の症例は,MPHA法において,インタクト血小板ではプロゾーン現象を示して反応するが,血小板抽出抗原では反応を示さず,クロロキン処理により反応性が減弱する性質をもった抗原に対する抗体を,NAIT症例患児の母親血清から検出し,この抗体がNAITの原因であるかもしれないと推察した.
ISSN:1881-3011
1883-0625
DOI:10.3925/jjtc.55.386