肺癌病巣に対する気管支鏡下生検後肺化膿症合併例の検討―合併症の予測と予防は可能か

背景.気管支鏡下生検後の肺化膿症は,肺癌の治療経過に影響を及ぼす重篤な合併症である.目的.気管支鏡下生検後の肺化膿症合併の危険因子を明らかにし,検査時の感染対策および検査後の抗菌薬投与などの予防策の有効性と限界を検証する.対象と方法.2001年4月から2013年3月に透視下生検を施行し,肺癌と診断された783例を対象とした.気管支鏡検査後の肺化膿症合併群と非合併群に分け,合併症の危険因子の解析を,単変量および多変量ロジスティック回帰分析を用いて行った.また2007年3月以前を前期(255例),それ以降を後期(528例)とし,予防的抗菌薬使用状況などの患者背景因子および肺化膿症発症頻度などの比較...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 38; no. 6; pp. 476 - 484
Main Authors 林, 祥子, 笠原, 慶太, 黒田, 佑介, 北見, 明彦, 鈴木, 浩介, 石井, 源, 大橋, 慎一, 堀内, 一哉, 佐野, 文俊, 植松, 秀護, 鹿間, 裕介, 鈴木, 隆, 神尾, 義人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2016
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.38.6_476

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Summary:背景.気管支鏡下生検後の肺化膿症は,肺癌の治療経過に影響を及ぼす重篤な合併症である.目的.気管支鏡下生検後の肺化膿症合併の危険因子を明らかにし,検査時の感染対策および検査後の抗菌薬投与などの予防策の有効性と限界を検証する.対象と方法.2001年4月から2013年3月に透視下生検を施行し,肺癌と診断された783例を対象とした.気管支鏡検査後の肺化膿症合併群と非合併群に分け,合併症の危険因子の解析を,単変量および多変量ロジスティック回帰分析を用いて行った.また2007年3月以前を前期(255例),それ以降を後期(528例)とし,予防的抗菌薬使用状況などの患者背景因子および肺化膿症発症頻度などの比較検討を行った.結果.単変量解析では,空洞あるいは内部壊死,CRP高値,組織型が扁平上皮癌の3因子が,肺化膿症合併の有意な危険因子であった.また多変量解析では,空洞あるいは中心部壊死を伴う病巣のみが,検査前に予測し得る独立した危険因子と判明した.予防的抗菌薬投与に関しては,空洞あるいは中心部壊死を伴う病巣150例の検討では,有意差は認めないものの(p=0.07),抗菌薬投与群に肺化膿症合併の頻度が低い傾向がみられた.全期間を通しての肺化膿症の合併は9例(1.1%)で,前期6例(2.4%),後期3例(0.6%)と後期に有意に減少した.結論.気管支鏡検査後の肺化膿症の予防には限界があるが,内部壊死あるいは空洞を伴い肺癌が疑われる画像所見を有する病巣に対する,選択的な抗菌薬投与は妥当と考えられた.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.38.6_476