光受容タンパク質によるエネルギー変換機構

「1. はじめに」光生物学という学問が始まったとき, 光エネルギー変換といえば光合成, 光情報変換といえば視覚であった. 光合成はクロロフィルのエネルギー移動や電子移動によって反応をスタートさせ, 最終的に炭水化物を合成する. 視覚はレチナールの光異性化反応によってタンパク質の構造変化をスタートさせ, Gタンパク質を活性化することで細胞内情報伝達が起こる. しかしながら, このようなシンプルな図式は新たな光受容タンパク質の発見により修正を余儀なくされて現在に至っている. 1971年にレチナールを持ったロドプシンが古細菌に見つかり, 最初は光情報変換を行うと考えられたこのタンパク質(バクテリオロ...

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Published in生物物理 Vol. 55; no. 6; pp. 291 - 298
Main Author 神取, 秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2015
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.55.291

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Summary:「1. はじめに」光生物学という学問が始まったとき, 光エネルギー変換といえば光合成, 光情報変換といえば視覚であった. 光合成はクロロフィルのエネルギー移動や電子移動によって反応をスタートさせ, 最終的に炭水化物を合成する. 視覚はレチナールの光異性化反応によってタンパク質の構造変化をスタートさせ, Gタンパク質を活性化することで細胞内情報伝達が起こる. しかしながら, このようなシンプルな図式は新たな光受容タンパク質の発見により修正を余儀なくされて現在に至っている. 1971年にレチナールを持ったロドプシンが古細菌に見つかり, 最初は光情報変換を行うと考えられたこのタンパク質(バクテリオロドプシンBR)の機能は光駆動プロトンポンプであることが明らかになった. ATP合成をもたらすプロトン濃度勾配の生成は光エネルギー変換である. 一方, 光合成の反応に関わるタンパク質群も, 様々な制御を行うことで光情報変換に関わることがわかってきた.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.55.291