ニューロンと神経回路網のダイナミカルな性質:カオス,同期,リズム,伝搬

「1. はじめに」 30年以上昔のことになるが, 生物システムを非平衡・非線形の観点から明らかにしようという研究が, 日本生物物理学会で活発に行われた時期があった. 生物システムが非線形系としての性質をうまく使い, 非平衡状態で機能していると感じていたからである. 当時, 非線形力学の観点からは, ニューロンが引き込み現象を起こすということ位しか分かっていなかった. しかし, 実際にニューロンを周期刺激すると, どう理解してよいか分からない複雑な応答がいくらでも生じ, それらの応答の再現性も乏しかった. このようなニューロンの複雑な応答が決定論的カオスであるという証拠が示されたのは1982年の...

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Published in生物物理 Vol. 54; no. 4; pp. 195 - 200
Main Author 林, 初男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2014
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.54.195

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Summary:「1. はじめに」 30年以上昔のことになるが, 生物システムを非平衡・非線形の観点から明らかにしようという研究が, 日本生物物理学会で活発に行われた時期があった. 生物システムが非線形系としての性質をうまく使い, 非平衡状態で機能していると感じていたからである. 当時, 非線形力学の観点からは, ニューロンが引き込み現象を起こすということ位しか分かっていなかった. しかし, 実際にニューロンを周期刺激すると, どう理解してよいか分からない複雑な応答がいくらでも生じ, それらの応答の再現性も乏しかった. このようなニューロンの複雑な応答が決定論的カオスであるという証拠が示されたのは1982年のことである. ニューロンの複雑で予測不可能な応答が非常に簡単な非線形力学則に従う決定論的な現象であることが明らかにされたのである. その後, イカの巨大軸索のカオス応答も明らかにされており, ニューロンモデルを用いた数多くの研究もなされた.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.54.195