肺炎・胸膜炎と鑑別を要した肺MALTリンパ腫の1例

背景.肺原発の悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の0.4%前後,全肺腫瘍の0.5~1%以下と報告されている稀な疾患である.今回我々は肺原発MALTリンパ腫を経験したので報告する.症例.69歳女性.某年7月初旬より3週間咳嗽や呼吸困難が持続し,近医の胸部X線写真で右肺野に広範な浸潤影と右胸水を指摘され,当院に救急搬送された.1週間の抗菌薬投与も胸部陰影は改善乏しく,右胸水が増加したため胸腔ドレナージを開始した.血清中のIgMが上昇しており,免疫電気泳動でIgM λ型のM蛋白が検出された.気管支鏡検査では肺胞洗浄液中のリンパ球分画増加が認められ,肺組織へのlymphoepithelial lesion(...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 39; no. 2; pp. 136 - 141
Main Authors 須田, 隆文, 加藤, 慎平, 笠松, 紀雄, 田中, 和樹, 松田, 周一, 小笠原, 隆, 矢野, 利章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2017
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.39.2_136

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Summary:背景.肺原発の悪性リンパ腫は全悪性リンパ腫の0.4%前後,全肺腫瘍の0.5~1%以下と報告されている稀な疾患である.今回我々は肺原発MALTリンパ腫を経験したので報告する.症例.69歳女性.某年7月初旬より3週間咳嗽や呼吸困難が持続し,近医の胸部X線写真で右肺野に広範な浸潤影と右胸水を指摘され,当院に救急搬送された.1週間の抗菌薬投与も胸部陰影は改善乏しく,右胸水が増加したため胸腔ドレナージを開始した.血清中のIgMが上昇しており,免疫電気泳動でIgM λ型のM蛋白が検出された.気管支鏡検査では肺胞洗浄液中のリンパ球分画増加が認められ,肺組織へのlymphoepithelial lesion(LEL)を呈するCD20陽性リンパ球の浸潤も伴っており,MALTリンパ腫が疑われた.胸水中にもCD20陽性リンパ球が増加しており,フローサイトメトリーでλ型への明らかな偏りが見られたことからmonoclonalityが証明された.肺組織と胸水中の細胞が同一であると考え,肺原発MALTリンパ腫と診断した.結論.肺原発MALTリンパ腫は稀な疾患である.今回我々は初診時に肺炎・胸膜炎を疑い抗菌薬治療を行ったが反応が乏しく,精査の過程で肺原発MALTリンパ腫の診断に至った症例を経験したので報告する.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.39.2_136