北田ら“5ALAと自家蛍光観察システムを用いた胸膜悪性病変に対する光学的診断法の有用性の検討”

肺癌の手術において胸膜浸潤や播種の有無は, 進行度に関係する重要な因子である. 手術の際に臓側胸膜や壁側胸膜に腫瘍浸潤や播種, 転移を疑うような病変を認めた場合に, 病理組織検査を経ずに観察のみで良性と悪性を鑑別することができたなら, 術者のストレスはかなり低下するのではないだろうか. また, 局所麻酔下胸腔鏡で観察を行ったときに胸膜病変の存在や範囲を正確に把握する方法があれば, 生検部位の決定にかなり有用と思われる. 気管支鏡検査の領域では, これまでに白色光による気管支の既存構造の分析に加えて, 自家蛍光観察(Autofluorescence Imaging:AFI)や狭帯域光観察(Nar...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 42; no. 3; p. 214
Main Author 山田, 玄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 25.05.2020
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.42.3_214

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Summary:肺癌の手術において胸膜浸潤や播種の有無は, 進行度に関係する重要な因子である. 手術の際に臓側胸膜や壁側胸膜に腫瘍浸潤や播種, 転移を疑うような病変を認めた場合に, 病理組織検査を経ずに観察のみで良性と悪性を鑑別することができたなら, 術者のストレスはかなり低下するのではないだろうか. また, 局所麻酔下胸腔鏡で観察を行ったときに胸膜病変の存在や範囲を正確に把握する方法があれば, 生検部位の決定にかなり有用と思われる. 気管支鏡検査の領域では, これまでに白色光による気管支の既存構造の分析に加えて, 自家蛍光観察(Autofluorescence Imaging:AFI)や狭帯域光観察(Narrow Band Imaging:NBI)などの画像強調観察が導入され, 内視鏡的な可視範囲に存在する腫瘍性病変の分析が試みられてきた. 本論文はそのような気管支鏡の画像診断を胸腔領域に発展させた内容と考えられ, 胸膜病変に対する新しいStrategyを与えるものである. 一般にAFIは, 可視範囲にある病変に対して正常組織と腫瘍組織での自家蛍光の強度差を利用して, 正常と異常部分の視認性を向上させることができる. 気管支鏡では, AFIシステムを用いて青色波長領域の励起光を粘膜の正常部に照射すると緑色波長領域の自家蛍光を発するが, 腫瘍組織ではこの緑色自家蛍光の減弱がみられる. 白色光では認識困難な微細病変を自家蛍光の減弱または欠損を利用して発見することができるため, 肺門部早期肺癌の精密検査に利用されることが多い. 病変部分と正常部分のコントラストを増幅することが本検査法の特徴であるが, 胸腔は気管支内腔とは異なり広い空間であることから病変部分の蛍光をより強調する工夫が必要と推察される. 筆者らは術前に光感受性物質5ALA(アミノレブリン酸)を投与することで, 腫瘍性病変を赤色蛍光に発光させて局在診断の精度を向上させている. 本研究の進展により, 将来は胸腔鏡領域において白色光所見の解析にAFIによる光学的な分析が加わることでより質的な診断に近づくと思われる. また, 筆者らが述べているように5ALAはフォトフィリンやレザフィリンと同様にPhotodynamic Therapy(PDT)に用いることが可能であることから, AFIシステムは胸腔の腫瘍性病変に対する局所治療への応用も期待される.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.42.3_214