当科における気管支肺胞洗浄の合併症の検討

背景.1970年代に確立された気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)は,感染性肺疾患,びまん性肺疾患の診断として広く用いられている.2010年の本邦からの報告では,BAL施行例12409件のうち0.77%に何らかの合併症が見られたとされている.目的.当科におけるBAL施行全症例の合併症の出現頻度を調べた.またBAL以外の手技を行わなかったBALのみ施行症例,特発性間質性肺炎に対しBALを施行した症例について,合併症の背景因子を調べた.対象と方法.2007年1月1日から2011年12月31日までの5年間に九州大学病院呼吸器科にてBALを施行した276例を対象とし,...

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Published inThe Journal of the Japan Society for Respiratory Endoscopy Vol. 38; no. 3; pp. 173 - 178
Main Authors 鈴木, 邦裕, 三雲, 大功, 中西, 洋一, 髙山, 浩一, 緒方, 彩子, 濵田, 直樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会 2016
日本呼吸器内視鏡学会
The Japan Society for Respiratory Endoscopy
Subjects
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ISSN0287-2137
2186-0149
DOI10.18907/jjsre.38.3_173

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Summary:背景.1970年代に確立された気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage:BAL)は,感染性肺疾患,びまん性肺疾患の診断として広く用いられている.2010年の本邦からの報告では,BAL施行例12409件のうち0.77%に何らかの合併症が見られたとされている.目的.当科におけるBAL施行全症例の合併症の出現頻度を調べた.またBAL以外の手技を行わなかったBALのみ施行症例,特発性間質性肺炎に対しBALを施行した症例について,合併症の背景因子を調べた.対象と方法.2007年1月1日から2011年12月31日までの5年間に九州大学病院呼吸器科にてBALを施行した276例を対象とし,診療録,気管支鏡レポートをもとにレトロスペクティブに検討した.結果.BAL施行全症例のうち50%,BALのみ施行症例のうち50.7%に合併症を認め,いずれも低酸素血症が最も多く見られた.BALのみ施行症例のうち合併症を認めた群では有意にBALF回収率が低値であり,カットオフ値は29%であった.また,低酸素血症を認めた群では有意に%VCが低値であった.特発性間質性肺炎症例においては51.8%に合併症を認め,発熱を認めた群で有意にCRP高値,BALF回収率の低値が見られ,低酸素血症を認めた群で有意にBALF中好中球分画の上昇,BALF回収率の低値を認めた.結語.当科においてBALによる重篤な合併症は見られなかったが,低酸素血症・発熱といった合併症が約半数で見られており,事前に十分な説明が必要であると考えられた.特に%VC低値,BALF回収率低値,BALF中好中球割合高値例では合併症が起こりやすく,注意深い観察が必要と考えられた.
ISSN:0287-2137
2186-0149
DOI:10.18907/jjsre.38.3_173