抗体の凝集メカニズム:スモルコフスキー凝集式によるモデリング

「1. はじめに」多くのバイオ医薬品の有効成分はタンパク質であるが, タンパク質は低分子化合物に比べ不安定であり, 物理的にも化学的にも劣化しやすい. なかでも変性に伴う凝集は, 薬効の低下のみならず免疫原性を示す可能性があることから, バイオ医薬品の品質管理上の懸念事項となっている. さらなる高品質生産に向けて, タンパク質凝集に関する分析法の高度化, メカニズムの包括的な解明, 実用に資するモデルの構築が望まれている. しかし, バイオ医薬品の凝集は, 長期の緩和過程を伴う非平衡系, 濃度依存を示す非理想系, 添加剤の影響を受ける多成分系での反応であり, 理論化学の対象として手強い相手であ...

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Published in生物物理 Vol. 59; no. 3; pp. 147 - 150
Main Authors 今村, 比呂志, 本田, 真也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2019
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.59.147

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Summary:「1. はじめに」多くのバイオ医薬品の有効成分はタンパク質であるが, タンパク質は低分子化合物に比べ不安定であり, 物理的にも化学的にも劣化しやすい. なかでも変性に伴う凝集は, 薬効の低下のみならず免疫原性を示す可能性があることから, バイオ医薬品の品質管理上の懸念事項となっている. さらなる高品質生産に向けて, タンパク質凝集に関する分析法の高度化, メカニズムの包括的な解明, 実用に資するモデルの構築が望まれている. しかし, バイオ医薬品の凝集は, 長期の緩和過程を伴う非平衡系, 濃度依存を示す非理想系, 添加剤の影響を受ける多成分系での反応であり, 理論化学の対象として手強い相手である. タンパク質の場合は, さらに配列依存性や構造変化の影響もある. 平衡論的に微量な, あるいは速度論的に短寿命な変性状態の分子が重要な役割を果たす. これらを統一的に理解することが困難なことは想像に難くない.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.59.147