腹部コンパートメント症候群を合併したため緊急手術を要した慢性機能性便秘症の1例

症例は14歳男児.幼少時より便秘を指摘されていた.腹痛出現し,近医にて浣腸,摘便をしていたが,腹満が増強し,嘔吐,頻脈,低血圧を認めるようになり,当院へ救急搬送となった.宿便によるコンパートメント症候群をきたしていると判断し全身麻酔下に摘便を試みたが困難であったため開腹手術に移行し,糞便除去および人工肛門造設術を施行した.術後,ヒルシュスプルング病を考慮し直腸生検および直腸肛門内圧検査を施行したが否定的であった.以後,定期的に腹部単純X線写真,注腸検査で直腸骨盤比と直腸の感覚閾値および最大耐容量を測定し改善傾向を認め,巨大直腸が改善してきたことを確認し術後21か月で人工肛門閉鎖術を施行した.現...

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Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 57; no. 3; pp. 656 - 662
Main Authors 田尻, 達郎, 古川, 泰三, 竹内, 雄毅, 東, 真弓, 山師, 幸大, 青井, 重善, 坂井, 宏平, 文野, 誠久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.04.2021
日本小児外科学会
Subjects
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ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.57.3_656

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Summary:症例は14歳男児.幼少時より便秘を指摘されていた.腹痛出現し,近医にて浣腸,摘便をしていたが,腹満が増強し,嘔吐,頻脈,低血圧を認めるようになり,当院へ救急搬送となった.宿便によるコンパートメント症候群をきたしていると判断し全身麻酔下に摘便を試みたが困難であったため開腹手術に移行し,糞便除去および人工肛門造設術を施行した.術後,ヒルシュスプルング病を考慮し直腸生検および直腸肛門内圧検査を施行したが否定的であった.以後,定期的に腹部単純X線写真,注腸検査で直腸骨盤比と直腸の感覚閾値および最大耐容量を測定し改善傾向を認め,巨大直腸が改善してきたことを確認し術後21か月で人工肛門閉鎖術を施行した.現在,人工肛門閉鎖後3年経過するが,緩下剤の内服のみで排便状況は良好である.今回我々は慢性機能性便秘症による宿便貯留からショック症状をきたした症例に対して緊急手術を施行し,救命し得た極めて稀な症例を経験したので報告する.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.57.3_656