悪性リンパ腫に対する標準的治療の動向

悪性リンパ腫は化学療法や放射線治療がよく奏効する高感受性悪性腫瘍に位置づけられ, がん化学療法の中で治療体系がもっとも整備され, 主な病型について組織学的悪性度やリスクグループに則した標準的治療が確立している. こうした治療法の向上は生存率をエンドポイント(主要評価項目)としたランダム化比較試験randomized controlled trial (RCT)を含む科学的に適正な臨床試験の積み重ねによってもたらされたものである. 今日の標準的治療は, ポジキンリンパ腫の限局期に対しては短期化学療法に続く病巣部放射線治療であり, 進展期にはABVD(ドキソルビシン, ブレオマイシン, ビンブラス...

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Published in医療 Vol. 61; no. 1; pp. 5 - 10
Main Author 堀田, 知光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 01.01.2007
国立医療学会
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.61.5

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Summary:悪性リンパ腫は化学療法や放射線治療がよく奏効する高感受性悪性腫瘍に位置づけられ, がん化学療法の中で治療体系がもっとも整備され, 主な病型について組織学的悪性度やリスクグループに則した標準的治療が確立している. こうした治療法の向上は生存率をエンドポイント(主要評価項目)としたランダム化比較試験randomized controlled trial (RCT)を含む科学的に適正な臨床試験の積み重ねによってもたらされたものである. 今日の標準的治療は, ポジキンリンパ腫の限局期に対しては短期化学療法に続く病巣部放射線治療であり, 進展期にはABVD(ドキソルビシン, ブレオマイシン, ビンブラスチン, デキサメタゾン)療法である. ろ胞性リンパ腫を中心とする低悪性度B細胞リンパ腫には最近まで生存の延長をもたらす治療法はなかったが, CD20抗原に対するモノクローナル抗体であるリツキシマブは化学療法との併用によって疾患の自然史を変えつつある. わが国の悪性リンパ腫の約40%を占めるび漫性大細胞型B細胞リンパ腫の限局期症例はリスク因子を持たない場合はCHOP(シクロホスファミド, ドキソルビシン, ビンクリスチン, プレドニゾロン)療法による短期化学療法に続く病巣部放射線治療である. 進行期症例には最近, リツキシマブとCHOPとの併用療法(R-CHOP)が標準的治療として確立した. 中高悪性度リンパ腫の再発における救援化学療法有効例には自家造血幹細胞移植autologous hematopoietic stem cell transplantation (AHSCT)併用の大量化学療法が標準的治療と位置づけられている. 近年の細胞遺伝学や分子病態研究の進歩により新規の抗体療法や分子標的治療薬の開発が急速に進みつつある. より有効で安全な新規治療が適切な臨床試験によって新たな標準的治療として確立することが望まれる.
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.61.5