当科における過去20年の小児外傷性膵損傷の経験と治療戦略

【目的】小児の外傷性膵損傷では,特に主膵管損傷例の治療における一定の見解はない.当科では保存的治療を可能な限り優先して行ってきたが,その妥当性について検討した.【方法】2000年から2019年の間に当科で治療した外傷性膵損傷18例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.【結果】年齢中央値は7.1歳(0.9~14.5歳)であった.日本外傷学会臓器損傷分類によりI型9例,II型2例,IIIa型2例,IIIb型5例に分類された.膵仮性囊胞は5例(I型2例,IIIa型1例,IIIb型2例)に認め,全例でドレナージ(開腹1例,経皮4例)が行われた.I・II型では血性腹水を伴う膵囊胞に対する開腹囊胞...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本小児外科学会雑誌 Vol. 56; no. 6; pp. 932 - 938
Main Authors 牧野, 晃大, 関岡, 明憲, 野村, 明芳, 山田, 進, 福本, 弘二, 三宅, 啓, 仲谷, 健吾, 金井, 理紗, 漆原, 直人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本小児外科学会 20.10.2020
日本小児外科学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0288-609X
2187-4247
DOI10.11164/jjsps.56.6_932

Cover

More Information
Summary:【目的】小児の外傷性膵損傷では,特に主膵管損傷例の治療における一定の見解はない.当科では保存的治療を可能な限り優先して行ってきたが,その妥当性について検討した.【方法】2000年から2019年の間に当科で治療した外傷性膵損傷18例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.【結果】年齢中央値は7.1歳(0.9~14.5歳)であった.日本外傷学会臓器損傷分類によりI型9例,II型2例,IIIa型2例,IIIb型5例に分類された.膵仮性囊胞は5例(I型2例,IIIa型1例,IIIb型2例)に認め,全例でドレナージ(開腹1例,経皮4例)が行われた.I・II型では血性腹水を伴う膵囊胞に対する開腹囊胞ドレナージ術と,肝実質損傷に対する肝縫合術およびドレナージ術が初期治療としてそれぞれ1例に行われた.IIIb型のうち2例では,合併した肝実質損傷に対する開腹止血術およびドレナージ術,代償性ショックと大量腹水に対する膵尾部切除術およびドレナージ術が初期治療としてそれぞれ1例で行われた.IIIb型の別の2例では,膵液瘻に対するLetton-Wilson手術,膵仮性囊胞増大に対する囊胞胃吻合術が経過中にそれぞれ1例で行われた.内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)は3例で施行されたが,いずれも受傷から1週間以上経過し,損傷部を超えた膵管ステント留置は困難であった.【結論】IIIb型では手術を要する症例が多く,主膵管損傷を伴う場合は早期手術介入を検討すべきである.
ISSN:0288-609X
2187-4247
DOI:10.11164/jjsps.56.6_932