特異的抗ヒトERβモノクローナル抗体PPZ0506発見がERβ研究に与えた衝撃

「1. 緒言」標的分子と特異的に結合する抗体は, 生命科学・医学分野で不可欠なツールであり, 様々な免疫学的測定法で使用される. 免疫組織化学染色法は, 生命科学・基礎医学分野では組織切片中の標的分子の発現・局在を同定する手法として, 組織病理学分野では病理組織検体内での標的マーカー分子の発現を評価することで診断手法として用いられる. 信頼性の高い免疫学的測定法の確立には, 使用する抗体の特異性が要となる. 特異性の高い抗体の存在は, 測定の再現性を高め, 該当する研究分野の発展に寄与する. しかし, 研究分野で普及している抗体が必ずしも抗原への特異性が保証されているわけではない. そのため,...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 19; no. 4; pp. 332 - 338
Main Authors 松本, 恵介, 小澤, 一史, 大塚, 真衣, 肥後, 心平, 小澤, 実那, 森下, 雅大, 石井, 寛高, 服部, 裕次郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 25.12.2023
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ISSN1349-8975
1880-2877
DOI10.1272/manms.19.332

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Summary:「1. 緒言」標的分子と特異的に結合する抗体は, 生命科学・医学分野で不可欠なツールであり, 様々な免疫学的測定法で使用される. 免疫組織化学染色法は, 生命科学・基礎医学分野では組織切片中の標的分子の発現・局在を同定する手法として, 組織病理学分野では病理組織検体内での標的マーカー分子の発現を評価することで診断手法として用いられる. 信頼性の高い免疫学的測定法の確立には, 使用する抗体の特異性が要となる. 特異性の高い抗体の存在は, 測定の再現性を高め, 該当する研究分野の発展に寄与する. しかし, 研究分野で普及している抗体が必ずしも抗原への特異性が保証されているわけではない. そのため, 非特異的な抗体の使用により, 研究の発展が阻害されることもありうる. ERβ研究は, まさに非特異的な抗体使用によって矛盾する結果が積み重なり, その発展が損なわれてきた1例である. これまで特異的抗ERβ抗体を作製・検索する試みがなされたが, 充分な特異性を持つ抗体を同定できずにいた.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.19.332