抗サイトケラチン抗体染色による胸部食道癌リンパ節微小転移の臨床的意義に関する検討

目的: 食道癌は適切な根治手術が行われてもなお再発が多く予後不良な疾患である. Stageの早い症例でも術後再発をきたす場合があり, このような症例では従来の組織学的手法では検出されない微小転移巣の関与が推測される. 本研究では, 手術で郭清されたリンパ節に対して抗サイトケラチン抗体 (CK13) 染色による免疫組織化学的染色法を用いて, 食道癌のリンパ節微小転移を検索しその臨床的意義について考察した.対象: 2000年に順天堂医院食道・胃外科で切除された食道癌症例80例のうち組織型が分化型扁平上皮癌で術前治療を行わず, 系統的3領域郭清が行われ, かつ予後の追跡が可能であった28症例とした....

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Published in順天堂医学 Vol. 55; no. 2; pp. 128 - 135
Main Authors 富田, 夏実, 鶴丸, 昌彦, 安藤, 隆夫, 梶山, 美明, 天野, 高行, 岩沼, 佳見, 諫山, 冬実
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2009
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.55.128

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Summary:目的: 食道癌は適切な根治手術が行われてもなお再発が多く予後不良な疾患である. Stageの早い症例でも術後再発をきたす場合があり, このような症例では従来の組織学的手法では検出されない微小転移巣の関与が推測される. 本研究では, 手術で郭清されたリンパ節に対して抗サイトケラチン抗体 (CK13) 染色による免疫組織化学的染色法を用いて, 食道癌のリンパ節微小転移を検索しその臨床的意義について考察した.対象: 2000年に順天堂医院食道・胃外科で切除された食道癌症例80例のうち組織型が分化型扁平上皮癌で術前治療を行わず, 系統的3領域郭清が行われ, かつ予後の追跡が可能であった28症例とした.方法: 手術で郭清されたリンパ節3289個を病理組織検索の後3μmに薄切しCK13を用いて染色, 鏡検し予後因子の解析を行った.結果: 全3289個のリンパ節のうちHE染色では20症例102個のリンパ節に転移を認めた. CK13染色による検索で新たに11症例19個の微小転移が認められた. この11症例はHE染色で転移 (pO) と診断された症例1例とHE染色で転移ありと診断された症例10例であった. 病理組織学的深達度, 転移リンパ節個数, リンパ節転移巣の大きさ, リンパ管侵襲, 血管侵襲, 組織型, 腫瘍最大径, 腫瘍占居部位を共変量として多変量解析を用いて予後因子を解析したところ, 微小転移の有無, 転移リンパ節数が有意な予後因子として選択された.結論: 胸部食道癌において, リンパ節微小転移はHE染色による病理組織学的検討で認められるリンパ節転移と同等に扱い, 手術で十分なリンパ節郭清を行うとともに, 術後追加治療を考慮するうえでの一つの指標になると考えられた.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.55.128