下顎に対する理学療法が咀嚼動作に及ぼす影響

理学療法,とりわけ運動療法は,筋骨格系の慢性疼痛性疾患の重要な治療法のひとつであるが,同じカテゴリの疾患である顎関節症における運動療法の応用は一般的ではない.運動療法が顎筋活動に及ぼす影響が明らかでないことは,その理由のひとつであろうと推察される.本研究の目的は,下顎基本運動に関わる運動療法が咀嚼動作に及ぼす影響を明らかにすることにある.顎口腔系に機能異常のない成人14名を無作為に訓練群と対照群の2群に分けた.一口量(10g)の米飯を片側咀嚼し,嚥下するまでを1試行とし,5試行からなるセッションを,10分を隔てて2度行い,その間の下顎運動を記録した.訓練群では両セッション間に運動訓練を実施した...

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Published in日本顎口腔機能学会雑誌 Vol. 18; no. 2; pp. 161 - 166
Main Authors 菱川, 龍樹, 前田, 望, 服部, 佳功, 楓, 公士朗, 小嶺, 祐子, 後藤, 崇晴, 藤野, 智子, 米田, 博行, 田中, 佑人, 村上, 大輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本顎口腔機能学会 2012
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ISSN1340-9085
1883-986X
DOI10.7144/sgf.18.161

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Summary:理学療法,とりわけ運動療法は,筋骨格系の慢性疼痛性疾患の重要な治療法のひとつであるが,同じカテゴリの疾患である顎関節症における運動療法の応用は一般的ではない.運動療法が顎筋活動に及ぼす影響が明らかでないことは,その理由のひとつであろうと推察される.本研究の目的は,下顎基本運動に関わる運動療法が咀嚼動作に及ぼす影響を明らかにすることにある.顎口腔系に機能異常のない成人14名を無作為に訓練群と対照群の2群に分けた.一口量(10g)の米飯を片側咀嚼し,嚥下するまでを1試行とし,5試行からなるセッションを,10分を隔てて2度行い,その間の下顎運動を記録した.訓練群では両セッション間に運動訓練を実施した.訓練は,被験者に命じた下顎側方偏心運動に,オトガイ付近に手掌の力で抵抗する,等尺性抵抗訓練を用いた.その結果,訓練群においては訓練前後の2セッション間で,咀嚼側方向への最大側方変位量と前頭面内での平均開口方向に有意差を認め,訓練後に側方変位量が増し,開口方向がより咀嚼側方向に偏ることが示された(ともに p=0.028).以上の知見は,訓練が咀嚼に伴う筋活動パタンの変化を示唆するものであり,今後,運動訓練に期待される長期効果を対象とする研究を行うことの妥当性が示された.
ISSN:1340-9085
1883-986X
DOI:10.7144/sgf.18.161