膵癌に対する低侵襲手術のもたらす恩恵と今後の発展性についての考察

「はじめに」外科医は昔から患者に対する尊敬と愛情の念から, 低侵襲な手術を常に心掛けてきた. 急性虫垂炎や鼠経ヘルニアにおいて術創を皮膚割線に沿わせ小さくしようとする行為は, すべての人から共感の得られやすい, 外科医に共通した思いやり行為であると言える. それ故に1990年代以降様々な術式に, さらなる低侵襲性の追及に向けて腹腔鏡下手術が導入されるようになり, そして腹壁破壊の縮小以外にも出血量の軽減や在院期間の短縮などの恩恵が見いだされ, 低侵襲手術が広く外科領域に定着してきたことも頷くことができる. その潮流は肝胆膵高難度手術をも巻き込み, いまや腹腔鏡下膵切除術は標準術式の一つとして広...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 20; no. 2; pp. 61 - 66
Main Authors 吉田, 寛, 金沢, 義一, 中村, 慶春
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 25.04.2024
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ISSN1349-8975
1880-2877
DOI10.1272/manms.20.61

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Summary:「はじめに」外科医は昔から患者に対する尊敬と愛情の念から, 低侵襲な手術を常に心掛けてきた. 急性虫垂炎や鼠経ヘルニアにおいて術創を皮膚割線に沿わせ小さくしようとする行為は, すべての人から共感の得られやすい, 外科医に共通した思いやり行為であると言える. それ故に1990年代以降様々な術式に, さらなる低侵襲性の追及に向けて腹腔鏡下手術が導入されるようになり, そして腹壁破壊の縮小以外にも出血量の軽減や在院期間の短縮などの恩恵が見いだされ, 低侵襲手術が広く外科領域に定着してきたことも頷くことができる. その潮流は肝胆膵高難度手術をも巻き込み, いまや腹腔鏡下膵切除術は標準術式の一つとして広く認知されるに至った. 膵癌に対しては, 時に癌腫の局在によって膵全摘術を選択することもあるが, 多くは膵体尾部切除術 (DP) と膵頭十二指腸切除術 (PD) が施行されている. 膵尾部と脾臓は左横隔膜下腔の深部背側に位置することから, DPでは患者の体形によっては上腹部正中切開だけでは対応できず, とても大きな術創 (腹壁破壊) が必要となる場合がある.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.20.61