早期慢性膵炎の歴史と現状,今後の課題

「1. はじめに」「慢性膵炎臨床診断基準2009」は世界に先駆けて早期慢性膵炎の概念を取り入れた診断基準であったが, その後の知見の蓄積によりその改訂が求められることとなった. 現行の診断基準は「慢性膵炎臨床診断基準2019」であり, その最大の特徴はmechanistic definitionの概念を取り入れることで, 早期慢性膵炎の診断項目を危険因子の観点から改訂したことである. 本稿では, 本邦における早期慢性膵炎の疾患概念について, 診断基準改訂の背景や概要, 残された課題点を含めて概説する. 「2. 慢性膵炎診断基準の変遷と早期慢性膵炎」慢性膵炎は膵臓の炎症性線維化疾患であり, 膵の...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 20; no. 2; pp. 45 - 49
Main Authors 松本, 諒太郎, 正宗, 淳, 菊田, 和宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 25.04.2024
Online AccessGet full text
ISSN1349-8975
1880-2877
DOI10.1272/manms.20.45

Cover

More Information
Summary:「1. はじめに」「慢性膵炎臨床診断基準2009」は世界に先駆けて早期慢性膵炎の概念を取り入れた診断基準であったが, その後の知見の蓄積によりその改訂が求められることとなった. 現行の診断基準は「慢性膵炎臨床診断基準2019」であり, その最大の特徴はmechanistic definitionの概念を取り入れることで, 早期慢性膵炎の診断項目を危険因子の観点から改訂したことである. 本稿では, 本邦における早期慢性膵炎の疾患概念について, 診断基準改訂の背景や概要, 残された課題点を含めて概説する. 「2. 慢性膵炎診断基準の変遷と早期慢性膵炎」慢性膵炎は膵臓の炎症性線維化疾患であり, 膵の形態変化, 病理組織像を基盤として臨床経過や膵機能などを踏まえて診断される. その臨床過程は潜在期・代償期・移行期・非代償期, もしくは早期・後期に分けられ, 潜在期~代償期 (初期) は繰り返す腹痛・背部痛や急性膵炎発作 (慢性膵炎急性増悪) が症状の中心となる一方で, 病態の進行とともに腹痛は軽減し膵外内分泌機能障害が進行していき (移行期), 非代償期 (後期) になると脂肪便 (消化吸収障害) や糖尿病など膵外内分泌機能障害が主症状となる.
ISSN:1349-8975
1880-2877
DOI:10.1272/manms.20.45