クロールヘキシジン誘発腹膜硬化マウスの腹膜修復におけるhepatocyte growth factor (HGF) の効果

背景: 長期腹膜透析症例では, 表層を覆う中皮細胞の消失といちじるしい中皮下層の線維性肥厚, 毛細血管を含む細動静脈血管病変を中心とする組織学的変性を認め, これらの組織学的変化が透析機能低下による除水不全や細菌感染に対する防御機能低下の原因となっている. 腹膜透析の中止によって, これらの組織学的・機能的変化は改善するとの報告がある一方で, 中止後に腹膜線維化が進行し, 重大な合併症である被嚢性腹膜硬化症にいたるとする報告もみられる. hepatocyte growth factor (HGF) は, 組織修復関連因子であるとともに, 抗線維化作用を有する成長因子として知られている. 今回,...

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Published in順天堂医学 Vol. 54; no. 2; pp. 200 - 207
Main Authors 井沼, 治朗, 小柳, 伊智朗, 井尾, 浩章, 稲葉, 真範, 故呂, 勇樹, 富野, 康日己, 濱田, 千江子, 金子, 佳代
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 順天堂医学会 2008
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ISSN0022-6769
2188-2134
DOI10.14789/pjmj.54.200

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Summary:背景: 長期腹膜透析症例では, 表層を覆う中皮細胞の消失といちじるしい中皮下層の線維性肥厚, 毛細血管を含む細動静脈血管病変を中心とする組織学的変性を認め, これらの組織学的変化が透析機能低下による除水不全や細菌感染に対する防御機能低下の原因となっている. 腹膜透析の中止によって, これらの組織学的・機能的変化は改善するとの報告がある一方で, 中止後に腹膜線維化が進行し, 重大な合併症である被嚢性腹膜硬化症にいたるとする報告もみられる. hepatocyte growth factor (HGF) は, 組織修復関連因子であるとともに, 抗線維化作用を有する成長因子として知られている. 今回, われわれはクロールヘキシジンアルコールchlorhexidine gluconate (CG) を腹腔内に連続投与し作成した腹膜硬化マウスの組織修復過程を検索するとともに, この過程におけるHGFの関与を検討した.方法: 55匹のBL/6雄マウスを2群に分け腹腔内に, 1) エタノールで溶解し, 生食で希釈した15%CG溶解液 (CG群), 2) 15%エタノール溶解液 (コントロール群) のそれぞれ0.5mlを隔日21日間注入した. 各群のマウスを投与終了時, 終了後7日, 21日, 35日目に屠殺した. 屠殺後直ちに前腹壁の腹膜を採取し, 腹膜組織のvimentin・HGF発現について免疫組織化学的に検索した.結果: CG投与中止直後のいちじるしい血管新生を伴った間質の肥厚は, 35日後にはほぼ正常な腹膜組織に回復した. 腹膜肥厚や腹膜中皮下層への細胞浸潤は21日まではほとんど変化がなかったが, 31日では著明に改善した. 中皮下に多数のvimentin陽性細胞を認めた. 中止直後はvimentin陽性細胞が多数みられたが, 時間の経過とともに減少した. また, vimentin陽性細胞の一部にHGF陽性細胞を認め, その比率は21日目まで増加傾向を示した.結語: CGによる腹膜障害の解除によって, 腹膜組織の修復機転が生じることが示された. この修復機転には, 間質に発現するHGFの組織修復誘導作用の関与が示唆された.
ISSN:0022-6769
2188-2134
DOI:10.14789/pjmj.54.200