血管平滑筋の異常収縮に対するアカセチンとビオカニン Aの異なる効果について

Rhoキナーゼ介在性Ca2+非依存性の血管の異常収縮は,くも膜下出血後の脳血管攣縮や狭心症などを惹起する.我々はCa2+非依存性の血管異常収縮の原因分子,スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を同定した.血管攣縮治療薬の理想的な条件は,Ca2+依存性の生理的な血管収縮に影響を与えずに,Ca2+非依存性血管平滑筋異常収縮を特異に阻害することであるが,我々はこの条件を満たすものとしてエイコサペンタエン酸(EPA)を見出した.実際にEPAはくも膜下出血後の血管攣縮を臨床的に抑制した.しかし,脂溶性のEPAは静脈内投与ができないため,新規水溶性の成分を探すことが急務であった. そこで植物由来成分を中...

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Published in山口医学 Vol. 70; no. 1; pp. 45 - 52
Main Author 張, 敏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 04.03.2021
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ISSN0513-1731
1880-4462
DOI10.2342/ymj.70.45

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Summary:Rhoキナーゼ介在性Ca2+非依存性の血管の異常収縮は,くも膜下出血後の脳血管攣縮や狭心症などを惹起する.我々はCa2+非依存性の血管異常収縮の原因分子,スフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を同定した.血管攣縮治療薬の理想的な条件は,Ca2+依存性の生理的な血管収縮に影響を与えずに,Ca2+非依存性血管平滑筋異常収縮を特異に阻害することであるが,我々はこの条件を満たすものとしてエイコサペンタエン酸(EPA)を見出した.実際にEPAはくも膜下出血後の血管攣縮を臨床的に抑制した.しかし,脂溶性のEPAは静脈内投与ができないため,新規水溶性の成分を探すことが急務であった. そこで植物由来成分を中心にスクリーニングを行いフラボノイドで構造異性体であるアカセチンとビオカニン Aに注目した.ブタ冠状動脈血管平滑筋条片においてアカセチン後投与は40mM K+ 誘発性収縮を若干抑制したもののSPC誘発性収縮を速く,そして強く抑制したが,対照的にビオカニン A後投与はSPC誘発収縮よりむしろ40mM K+誘発性収縮を抑制するか,同程度に強く抑制した.アカセチンとビオカニン Aは共に,SPC誘発性Rhoキナーゼ活性化とミオシン軽鎖リン酸化の増加を強く阻害し,さらにヒト冠状動脈平滑筋細胞を用いた形態観察においてもSPC刺激によって生じる形態変化を強く抑制した. 以上の結果から,フェニル基の位置の相違が,後投与においてSPC誘発性異常収縮を特異的に抑制するかどうかに関与すると考えられる.
ISSN:0513-1731
1880-4462
DOI:10.2342/ymj.70.45