児童養護施設における入所児童の「一時帰宅」および「宿泊交流」に関する研究 施設内で観察される「問題行動」との関連の検討を含めて

本研究では, 児童養護施設に入所している児童が, 週末などを利用して親の住む家へ宿泊を行う「一時帰宅」の実態と, 家庭での生活体験を目的とした一般家庭への宿泊もしくは親類の住む家への宿泊を行う「宿泊交流」の実態を明らかにすることを目的とした。また, 一時帰宅および宿泊交流と施設内で観察される「問題行動」との関連にっいて明らかにし, 検討することを目的とした。1箇所の児童養護施設の担当職員に調査票の記入を依頼し, 入所児童97名分の回答を得た。結果として, 一時帰宅および宿泊交流を実施している児童が86.6%を占めており, そのうち親元への一時帰宅が約5割, 一般家庭・親類宅への宿泊交流が約4割...

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Published inThe Japanese Journal of Mental Health Vol. 23; no. 1; pp. 33 - 46
Main Authors 菅野, 恵, 元永, 拓郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本精神衛生学会 2008
THE JAPANESE ASSOCIATION FOR MENTAL HEALTH
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ISSN0912-6945
2186-0246
DOI10.11383/kokoronokenkou1986.23.33

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Summary:本研究では, 児童養護施設に入所している児童が, 週末などを利用して親の住む家へ宿泊を行う「一時帰宅」の実態と, 家庭での生活体験を目的とした一般家庭への宿泊もしくは親類の住む家への宿泊を行う「宿泊交流」の実態を明らかにすることを目的とした。また, 一時帰宅および宿泊交流と施設内で観察される「問題行動」との関連にっいて明らかにし, 検討することを目的とした。1箇所の児童養護施設の担当職員に調査票の記入を依頼し, 入所児童97名分の回答を得た。結果として, 一時帰宅および宿泊交流を実施している児童が86.6%を占めており, そのうち親元への一時帰宅が約5割, 一般家庭・親類宅への宿泊交流が約4割みられた。親元への一時帰宅が実現しにくい児童に対しても, 施設側が宿泊交流の機会を設定するなどの配慮を行っている実態が明らかになった。一時帰宅および宿泊交流と問題行動との関連については, 親元への一時帰宅を実施している「家族帰泊群」において「喧嘩誘発行動」の得点が有意に高い結果となったが, 家庭復帰への期待や不安が募ることで行動化しやすい可能性が考えられる。また, 「家族帰泊群」に関する自由記述を分類した結果, 「児童の心理・行動面の変化」, 「親からの影響」, 「児童と家族との相互作用」の3つのカテゴリーから一時帰宅の効果と課題が示唆された。児童の問題行動にはさまざまな要因が考えられるが, 一時帰宅に関連する要因や家族との関係性にも着目しながら児童や家族への支援を行うことが望まれる。
ISSN:0912-6945
2186-0246
DOI:10.11383/kokoronokenkou1986.23.33