高齢者めまいの診断と治療

「1. 高齢者めまいの特徴」 高齢者人口の増加とともに, めまいを主訴に来院する高齢者患者は増えている. 72歳以上の24%にめまい・平衡障害がみられ1), また転倒・骨折の危険因子としてのめまい・平衡障害の相対リスクは2.9倍とされている2). 高齢者では, 加齢とともに, 中枢・末梢感覚神経系と身体バランスに関わっている筋固有知覚に変化が生じ, 三半規管・卵形嚢・球形嚢の感度低下, 感覚上皮細胞数・前庭一次神経ニューロン数減少, 中枢前庭系における処理過程の変化などが認められる. 当初は代償機構で補えるが, 代償範囲を超える変化が進行すると, 頭部運動制限や歩行・姿勢の制限が明らかになって...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 114; no. 11; pp. 882 - 885
Main Author 矢部, 多加夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 2011
日本耳鼻咽喉科学会
Online AccessGet full text
ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.114.882

Cover

More Information
Summary:「1. 高齢者めまいの特徴」 高齢者人口の増加とともに, めまいを主訴に来院する高齢者患者は増えている. 72歳以上の24%にめまい・平衡障害がみられ1), また転倒・骨折の危険因子としてのめまい・平衡障害の相対リスクは2.9倍とされている2). 高齢者では, 加齢とともに, 中枢・末梢感覚神経系と身体バランスに関わっている筋固有知覚に変化が生じ, 三半規管・卵形嚢・球形嚢の感度低下, 感覚上皮細胞数・前庭一次神経ニューロン数減少, 中枢前庭系における処理過程の変化などが認められる. 当初は代償機構で補えるが, 代償範囲を超える変化が進行すると, 頭部運動制限や歩行・姿勢の制限が明らかになってくる. 前庭系の変化に加えて眼球運動制御機構の変化, つまり視覚・光受容と眼・頭部・躯幹運動を制御する中枢神経系の変化も生じ, 眼球運動・頭部運動・姿勢と運動における代償機構を調節する反射の減弱, 身体バランスの不安定さをもたらす.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.114.882