高齢者の貧血
人口の高齢化は米国も例外ではありませんが, それに伴い, 最近問題となってきているのが貧血です. しばらく前に発表された米国第III次国民健康栄養調査(HNANES III)では, WHOの貧血の定義, 男性;Hb13g/dl未満, 女性Hb12g/dl未満で考えると, 実に65歳以上の人々の約10%に貧血が認められています. 高齢者の貧血で問題なのは, 貧血の原因や治療はさておき, 貧血があること自体が身体機能や生活の質を低下させること, ひいては死亡率をあげることが判明してきたことにあります. 推計では米国では65歳以上の約300万人に貧血があることになるようです. 米国内科学会や血液学会...
Saved in:
| Published in | THE SHINSHU MEDICAL JOURNAL Vol. 54; no. 6; p. 406 |
|---|---|
| Main Author | |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
信州医学会
2006
The Shinshu Medical Society |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0037-3826 1884-6580 |
| DOI | 10.11441/shinshumedj.54.406 |
Cover
| Summary: | 人口の高齢化は米国も例外ではありませんが, それに伴い, 最近問題となってきているのが貧血です. しばらく前に発表された米国第III次国民健康栄養調査(HNANES III)では, WHOの貧血の定義, 男性;Hb13g/dl未満, 女性Hb12g/dl未満で考えると, 実に65歳以上の人々の約10%に貧血が認められています. 高齢者の貧血で問題なのは, 貧血の原因や治療はさておき, 貧血があること自体が身体機能や生活の質を低下させること, ひいては死亡率をあげることが判明してきたことにあります. 推計では米国では65歳以上の約300万人に貧血があることになるようです. 米国内科学会や血液学会では実態の把握や対処法の検討に乗り出しています. 高齢者の貧血の原因としては(1)出血/栄養関連;いわゆる鉄欠乏, ビタミンB12欠乏, 葉酸欠乏, (2)エリスロポイエチンの絶対的ないしは相対的欠乏によるとされる慢性疾患に伴うもの, 症候性貧血(慢性疾患に伴う貧血)や慢性腎疾患(CKD)が主体, (3)その他, 造血器疾患に伴うもの, 薬剤性, 原因が未だ不明であるものを含む, に大きく分けられています. それぞれ, 約3分の1ずつを占めています. 人種, 年齢構成の差をはじめ, 米国の結果を直接当てはめられるわけではありませんが, 単純計算すれば本邦にも100万人を超える高齢者に貧血とそれに伴う健康上の問題が存在する可能性があるということになります. “年齢が進めば, 貧血になるものだ”という漠然とした意識から抜け出て, 新たな視点でみていくことが今後, 重要になるかもしれません. |
|---|---|
| ISSN: | 0037-3826 1884-6580 |
| DOI: | 10.11441/shinshumedj.54.406 |