膵癌に対する術前治療

「I はじめに」最新のがん統計によると, 膵癌は本邦部位別癌死亡の第4位を占めており, その数は年々増加傾向にある. 5年相対生存率は男性で8.9%, 女性で8.1%と全悪性腫瘍の中でも際立って低く, きわめて生物学的悪性度の高い癌種である. 膵癌は早期の段階から血流やリンパ流に流出し, 多臓器に転移を引き起こすとされる. 外科切除のみでは全身に散布された癌細胞を完全に除去できず, 全身化学療法を組み合わせることが予後の改善に必要であるとの考えがある. これに基づき, 切除後の再発制御による予後向上をめざし, 術後補助化学療法の開発がすすめられてきた. すでに本邦では, 根治切除後のS-1単剤...

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Published in信州医学雑誌 Vol. 69; no. 3; pp. 149 - 151
Main Authors 副島, 雄二, 野竹, 剛
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 信州医学会 10.06.2021
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ISSN0037-3826
1884-6580
DOI10.11441/shinshumedj.69.149

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Summary:「I はじめに」最新のがん統計によると, 膵癌は本邦部位別癌死亡の第4位を占めており, その数は年々増加傾向にある. 5年相対生存率は男性で8.9%, 女性で8.1%と全悪性腫瘍の中でも際立って低く, きわめて生物学的悪性度の高い癌種である. 膵癌は早期の段階から血流やリンパ流に流出し, 多臓器に転移を引き起こすとされる. 外科切除のみでは全身に散布された癌細胞を完全に除去できず, 全身化学療法を組み合わせることが予後の改善に必要であるとの考えがある. これに基づき, 切除後の再発制御による予後向上をめざし, 術後補助化学療法の開発がすすめられてきた. すでに本邦では, 根治切除後のS-1単剤による補助療法が標準治療として位置づけられている. 現在はさらなる治療効果を目指し, 術前補助療法 (neoadjuvant therapy : NAT) の試みが報告されている.
ISSN:0037-3826
1884-6580
DOI:10.11441/shinshumedj.69.149