原発性悪性脳腫瘍に対する光線力学的治療の治療成績から見た今後の課題

原発性悪性脳腫瘍に対するtalaporfin sodiumを用いた光線力学的治療(photodynamic therapy: PDT)は,これまでの研究から安全性は確認されてきたが,その有効性は十分に明らかとなっていない.そこで,当院でのPDTの治療成績を解析し,その課題について検討した.原発性悪性脳腫瘍患者36例に対して,41回のPDTを行った.初発膠芽腫5例,再発膠芽腫19例の無増悪生存期間中央値は31.6か月,5.8か月,全生存期間は50.8か月,15.7か月であった.PDTに関連した有害事象として,5回で無症候性脳浮腫の悪化を認めたが,グレード2以上の皮膚有害事象は認めなかった.全摘出...

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Published in日本レーザー医学会誌 Vol. 44; no. 2; pp. 117 - 121
Main Author 荒川, 芳輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会 15.07.2023
日本レーザー医学会
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ISSN0288-6200
1881-1639
DOI10.2530/jslsm.jslsm-44_0030

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Summary:原発性悪性脳腫瘍に対するtalaporfin sodiumを用いた光線力学的治療(photodynamic therapy: PDT)は,これまでの研究から安全性は確認されてきたが,その有効性は十分に明らかとなっていない.そこで,当院でのPDTの治療成績を解析し,その課題について検討した.原発性悪性脳腫瘍患者36例に対して,41回のPDTを行った.初発膠芽腫5例,再発膠芽腫19例の無増悪生存期間中央値は31.6か月,5.8か月,全生存期間は50.8か月,15.7か月であった.PDTに関連した有害事象として,5回で無症候性脳浮腫の悪化を認めたが,グレード2以上の皮膚有害事象は認めなかった.全摘出後にPDTを実施した初発膠芽腫患者,術後創部感染を合併した再発膠芽腫患者で長期の局所腫瘍制御を認めた.これらの結果から,PDTは安全に実施可能であり,全摘出された初発例でPDTによる腫瘍局所制御の可能性が示唆された.今後の課題は,全摘出された初発膠芽腫を対象としたPDTの有効性を評価するランダム化比較試験の実施である.
ISSN:0288-6200
1881-1639
DOI:10.2530/jslsm.jslsm-44_0030