無症候性蛋白尿を契機に発見されたTRPC6 遺伝子変異による巣状分節性糸球体硬化症の女児例

家族性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を来たす原因遺伝子としてTRPC6 (Transient receptor potential cation channel 6)遺伝子が知られる。今回,無症候性蛋白尿を契機に発見されたTRPC6 遺伝子変異によるFSGS の孤発例を経験した。症例は2 歳女児。溶連菌罹患後に蛋白尿が持続したため,2 歳6 か月時に腎生検を施行。高血圧や浮腫,血尿,腎機能障害,低補体血症等は認めず。光顕所見上軽度のメサンギウム増殖性腎炎像で,58 個の糸球体のうち1 個のみポドサイトやボーマン囊上皮細胞の腫大・変性像と,それに続く近位尿細管の上皮細胞の膨化像からFSGS...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本小児腎臓病学会雑誌 Vol. 32; no. 1; pp. 37 - 42
Main Authors 山田, 拓司, 鈴木, 博乃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本小児腎臓病学会 2019
日本小児腎臓病学会
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0915-2245
1881-3933
DOI10.3165/jjpn.cr.2018.0147

Cover

More Information
Summary:家族性巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)を来たす原因遺伝子としてTRPC6 (Transient receptor potential cation channel 6)遺伝子が知られる。今回,無症候性蛋白尿を契機に発見されたTRPC6 遺伝子変異によるFSGS の孤発例を経験した。症例は2 歳女児。溶連菌罹患後に蛋白尿が持続したため,2 歳6 か月時に腎生検を施行。高血圧や浮腫,血尿,腎機能障害,低補体血症等は認めず。光顕所見上軽度のメサンギウム増殖性腎炎像で,58 個の糸球体のうち1 個のみポドサイトやボーマン囊上皮細胞の腫大・変性像と,それに続く近位尿細管の上皮細胞の膨化像からFSGS を強く疑った。次世代シークエンサーにより既報のTRPC6 遺伝子変異が同定された。NS に至る前に遺伝性FSGS と診断されたことにより,治療不応性が予測されるステロイド剤使用を回避した。しかし今後難治性NS から末期腎不全に至る可能性が極めて高いため,長期的視野に立った治療管理が必要となる。3 歳6 か月現在ACE 阻害剤投与中であるが,蛋白尿の改善はみられていない。
ISSN:0915-2245
1881-3933
DOI:10.3165/jjpn.cr.2018.0147