頸部神経鞘腫の取り扱い

「1. はじめに」頸部神経鞘腫は, かつては術前診断が困難で, リンパ節転移や唾液腺腫瘍といった治療方針が全く異なる疾患と鑑別がつかないまま手術が行われ, 腫瘍被膜が神経へ移行する術中所見や, 術後の神経麻痺出現によってはじめて神経鞘腫と診断されることがまれではなかった. また, 神経鞘腫が疑われても被膜を含めた腫瘍の全摘出や神経切断により, 神経脱落症状を生じることが大きな問題とされてきた. しかし, 現在では神経鞘腫という疾患の認識が深まるとともに, 画像診断が進歩したことによって, 術前に神経鞘腫と診断すること, さらには由来神経を推測すること, 術後の神経機能に関する予後を予測すること...

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Published in日本耳鼻咽喉科学会会報 Vol. 120; no. 2; pp. 149 - 150
Main Author 古川, まどか
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会 20.02.2017
日本耳鼻咽喉科学会
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ISSN0030-6622
1883-0854
DOI10.3950/jibiinkoka.120.149

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Summary:「1. はじめに」頸部神経鞘腫は, かつては術前診断が困難で, リンパ節転移や唾液腺腫瘍といった治療方針が全く異なる疾患と鑑別がつかないまま手術が行われ, 腫瘍被膜が神経へ移行する術中所見や, 術後の神経麻痺出現によってはじめて神経鞘腫と診断されることがまれではなかった. また, 神経鞘腫が疑われても被膜を含めた腫瘍の全摘出や神経切断により, 神経脱落症状を生じることが大きな問題とされてきた. しかし, 現在では神経鞘腫という疾患の認識が深まるとともに, 画像診断が進歩したことによって, 術前に神経鞘腫と診断すること, さらには由来神経を推測すること, 術後の神経機能に関する予後を予測することもある程度可能となってきた. 本稿では精度の高い頸部神経鞘腫の診断法と手術適応など治療方針に関する考え方および実際の手術法について述べる. 「2. 頸部神経鞘腫の診断」神経鞘腫はSchwann細胞から成る被膜に覆われた良性腫瘍で, 頸部では迷走神経, 交感神経, 腕神経叢, 舌下神経などから発生するものが臨床上問題となることが多い.
ISSN:0030-6622
1883-0854
DOI:10.3950/jibiinkoka.120.149