腰椎破裂骨折に合併した外傷性総腸骨動脈解離の1例

64歳,男性.約2.5m高より転落し,当科救急外来搬送された.意識清明で全身に多数の打撲傷,口腔内出血を認めた.腰痛と左下肢の疼痛を訴え,徐々に左下肢の皮膚温低下,運動,知覚麻痺,皮膚色調変化が進行した.左大腿動脈以下の動脈拍動が触知不能であった.下顎骨骨折と第4腰椎椎体の骨折を認めたが,脊柱管内への骨片の突出はなかった.腹部造影CTで腰椎骨折部に隣接する左総腸骨動脈の外傷性解離による閉塞を認めた.左下肢阻血に対する循環動態改善のため,緊急で左総腸骨動脈結紮術と大腿動脈―大腿動脈バイパス術を施行した.術後,左下肢の循環動態は改善し,左下肢痛,運動,知覚障害とも速やかに回復した.術後1年4ヵ月の...

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Published in整形外科と災害外科 Vol. 55; no. 3; pp. 297 - 300
Main Authors 釘崎, 創, 廣田, 康宏, 小関, 弘展, 青柳, 孝彦, 野崎, 義宏, 力武, 一久, 古市, 格, 大野, 晴子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 西日本整形・災害外科学会 2006
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ISSN0037-1033
1349-4333
DOI10.5035/nishiseisai.55.297

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Summary:64歳,男性.約2.5m高より転落し,当科救急外来搬送された.意識清明で全身に多数の打撲傷,口腔内出血を認めた.腰痛と左下肢の疼痛を訴え,徐々に左下肢の皮膚温低下,運動,知覚麻痺,皮膚色調変化が進行した.左大腿動脈以下の動脈拍動が触知不能であった.下顎骨骨折と第4腰椎椎体の骨折を認めたが,脊柱管内への骨片の突出はなかった.腹部造影CTで腰椎骨折部に隣接する左総腸骨動脈の外傷性解離による閉塞を認めた.左下肢阻血に対する循環動態改善のため,緊急で左総腸骨動脈結紮術と大腿動脈―大腿動脈バイパス術を施行した.術後,左下肢の循環動態は改善し,左下肢痛,運動,知覚障害とも速やかに回復した.術後1年4ヵ月の現在は機能障害なく現職に復帰している.受傷機転は腰椎の過伸展強制により動脈が牽引されたものと推察された.腰椎骨折に合併した総腸骨動脈解離は稀有であるが,重篤な外傷であるため,迅速な対応が必要である.
ISSN:0037-1033
1349-4333
DOI:10.5035/nishiseisai.55.297