メカニカルアンフォールディング研究の最前線―タンパク質を引っ張ってみてわかること

「1.はじめに」 タンパク質の立体構造を眺めると, 内部は密に詰まっており, ファンデルワールス結合や水素結合が効率よく形成されていることがわかる. では「この部分の構造はどのくらい柔らかく, ゆらいでいるのか?」「ここの結合を切るのに必要な力はどのくらいだろうか?」といった興味が出てこないだろうか?そして実際にタンパク質を"つまんで"変形させたり, 引っ張ってほどいてみたいと思ったことはないだろうか? 手でつまむのは無理だが, 原子間力顕微鏡(AFM)や光ピンセットに代表される1分子操作技術の発達により, このような実験が行えるようになってきた. 1996年にはじめてメカ...

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Published in生物物理 Vol. 51; no. 4; pp. 168 - 173
Main Authors 小林, 亜紀子, 谷口, 幸範, 川上, 勝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2011
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.51.168

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Summary:「1.はじめに」 タンパク質の立体構造を眺めると, 内部は密に詰まっており, ファンデルワールス結合や水素結合が効率よく形成されていることがわかる. では「この部分の構造はどのくらい柔らかく, ゆらいでいるのか?」「ここの結合を切るのに必要な力はどのくらいだろうか?」といった興味が出てこないだろうか?そして実際にタンパク質を"つまんで"変形させたり, 引っ張ってほどいてみたいと思ったことはないだろうか? 手でつまむのは無理だが, 原子間力顕微鏡(AFM)や光ピンセットに代表される1分子操作技術の発達により, このような実験が行えるようになってきた. 1996年にはじめてメカニカルな力によるタンパク質のアンフォールディングが三井らによって観測され, 翌1997年にはRiefらによる筋タンパク質タイチン(コネクチン)の論文がサイエンス誌に掲載された. 以後タンパク質を引っ張ってほどくという研究分野が生まれ, 実験・理論の両面で発展を遂げている. 今ではこの手法によってタンパク質の内部構造やダイナミクスに関する多くの情報が生理的溶液条件下で得られることがわかってきた.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.51.168