急性にイレウスを発症した特発性腸管膜様包裏症の一例

腸管膜様包裏症は白色〜灰白色の線維性被膜に小腸を中心とした腹腔内臓器が覆われ,イレウス症状を呈するまれな疾患である。英語ではsclerosing encapsulating peritonitis (SEP) と訳され,原因が明らかである続発性と,明らかでない特発性に分類される。今回我々は,急性にイレウスを発症し,緊急手術を施行した特発性の腸管膜様包裏症の一例を経験した。症例は74歳の男性で,前日からの嘔吐,腹痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CT検査で上腹部にヘルニア嚢様構造物を認め,小腸が嵌頓している様であり,内ヘルニアの診断で緊急手術を施行した。開腹すると小腸全体が線維性被膜に包まれてお...

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Published in聖マリアンナ医科大学雑誌 Vol. 43; no. 4; pp. 269 - 274
Main Authors 佐治, 攻, 真船, 太一, 民上, 真也, 福岡, 麻子, 松下, 恒久, 大坪, 毅人, 榎本, 武治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 学校法人 聖マリアンナ医科大学医学会 2016
聖マリアンナ医科大学医学会
St. Marianna University Society of Medical Science
Subjects
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ISSN0387-2289
2189-0285
DOI10.14963/stmari.43.269

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Summary:腸管膜様包裏症は白色〜灰白色の線維性被膜に小腸を中心とした腹腔内臓器が覆われ,イレウス症状を呈するまれな疾患である。英語ではsclerosing encapsulating peritonitis (SEP) と訳され,原因が明らかである続発性と,明らかでない特発性に分類される。今回我々は,急性にイレウスを発症し,緊急手術を施行した特発性の腸管膜様包裏症の一例を経験した。症例は74歳の男性で,前日からの嘔吐,腹痛を主訴に当院を受診した。腹部造影CT検査で上腹部にヘルニア嚢様構造物を認め,小腸が嵌頓している様であり,内ヘルニアの診断で緊急手術を施行した。開腹すると小腸全体が線維性被膜に包まれており,被膜を切開すると内部に漿液性の腹水を認め,小腸がさらに線維性被膜に包まれて癒着していた。腸管膜様包裏症と診断し,可能な限り小腸同士の癒着を剥離し,線維性被膜を切除した。術後経過は良好であったが,退院後に2回腸閉塞で再入院した。腸管膜様包裏症の画像所見は内ヘルニアと類似している。症状は慢性から急性の経過でイレウス症状を呈するが,自験例では急性の経過であり,内ヘルニアの疑いで緊急手術を施行した。術中所見では腸管の虚血性変化は認めず,まずは保存的加療を選択できた可能性があった。腸管膜様包裏症は稀な疾患であり,術前診断に苦渋したが,その重要性が示唆された一例であった。
ISSN:0387-2289
2189-0285
DOI:10.14963/stmari.43.269