タンパク質のミニマルデザイン:スーパーシニョリンの構造とゆらぎ

「1. 緒言 “Less is more.”-L.Mies van der Rohe ミニマリズムは, 60年代に米国で登場した視覚芸術分野の創作概念で, 肥大化した過去の様式から冗長を極限まで削ぎ落とすことで, 最も基本的な美の構造を追求しようとした1). その運動は, 音楽, 建築, 文学におよび, さらに言語学や社会システム論にまで影響した2). タンパク質分子もアミノ酸残基を構成単位とする造形物である. また, 現在われわれが目にしている分子の姿は, 進化の過程でさまざまな冗長を抱え込んだ肥大化様式であるともいえよう. ならばミニマリズムの戦略は, タンパク質の本質的実体の解明において...

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Published in生物物理 Vol. 49; no. 3; pp. 126 - 129
Main Author 本田, 真也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本生物物理学会 2009
日本生物物理学会
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ISSN0582-4052
1347-4219
DOI10.2142/biophys.49.126

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Summary:「1. 緒言 “Less is more.”-L.Mies van der Rohe ミニマリズムは, 60年代に米国で登場した視覚芸術分野の創作概念で, 肥大化した過去の様式から冗長を極限まで削ぎ落とすことで, 最も基本的な美の構造を追求しようとした1). その運動は, 音楽, 建築, 文学におよび, さらに言語学や社会システム論にまで影響した2). タンパク質分子もアミノ酸残基を構成単位とする造形物である. また, 現在われわれが目にしている分子の姿は, 進化の過程でさまざまな冗長を抱え込んだ肥大化様式であるともいえよう. ならばミニマリズムの戦略は, タンパク質の本質的実体の解明においても有効な手段となるに違いない3). タンパク質の下限サイズに関しては, 20年前は構造エネルギー論の考察から50残基程度と推定されていたが4), WW domainやvillin headpiece subdomainの40-35残基の構造が報告されると5)もっと小さい分子でもフォールドするのではないかと試みられるようになった.
ISSN:0582-4052
1347-4219
DOI:10.2142/biophys.49.126