刑事裁判で問われるものと麻酔科医の立ち居
1つの医療行為がもたらす結果との因果関係は多様かつ非線形であり,これを予測することは容易ではない.しかし,医療事故後の対応において,この多様かつ非線形性への理解が不十分なまま,結果の重大性から後方視野的な因果関係により責任を問う傾向があるのではないか.刑事・民事に限らず裁判は,真相究明の制度ではなく,法的責任をただす真相糾明の制度である.それ故,大野病院事件裁判で麻酔科的論点は問題とされなかったが,大量出血後の管理など問うべき論点は残された.例えば,手術室のスタッフに加え,病院全体での人的支援があったならばと思う.麻酔により患者の意識を奪う麻酔科医は,患者の代理人としてその立ち居が問われている...
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Published in | 日本臨床麻酔学会誌 Vol. 32; no. 7; pp. 966 - 973 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本臨床麻酔学会
2012
|
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0285-4945 1349-9149 |
DOI | 10.2199/jjsca.32.966 |
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Summary: | 1つの医療行為がもたらす結果との因果関係は多様かつ非線形であり,これを予測することは容易ではない.しかし,医療事故後の対応において,この多様かつ非線形性への理解が不十分なまま,結果の重大性から後方視野的な因果関係により責任を問う傾向があるのではないか.刑事・民事に限らず裁判は,真相究明の制度ではなく,法的責任をただす真相糾明の制度である.それ故,大野病院事件裁判で麻酔科的論点は問題とされなかったが,大量出血後の管理など問うべき論点は残された.例えば,手術室のスタッフに加え,病院全体での人的支援があったならばと思う.麻酔により患者の意識を奪う麻酔科医は,患者の代理人としてその立ち居が問われている. |
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ISSN: | 0285-4945 1349-9149 |
DOI: | 10.2199/jjsca.32.966 |