光駆動ナトリウムポンプの発見
「1. はじめに: 微生物型ロドプシンとは」アメリカ西海岸, サンフランシスコ周辺の沿岸地域には製塩のための広大な塩田が広がっているが, 古くからこの塩田の水がしばしば赤紫色に染まる現象が知られている. これはこの塩田に住むHalobacterium Salinarumと呼ばれる高度好塩古細菌が繁殖したものであり, この菌がその細胞膜中にバクテリオロドプシン(BR)と呼ばれる紫色の色素膜タンパク質を大量に発現しているために見られた現象である1). その後このBRはタンパク質内部にall-trans型のレチナールと呼ばれる色素を結合し, 可視光を吸収すると, そのエネルギーを使って細胞の内側から...
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Published in | 生物物理 Vol. 54; no. 2; pp. 106 - 107 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本生物物理学会
2014
日本生物物理学会 |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0582-4052 1347-4219 |
DOI | 10.2142/biophys.54.106 |
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Summary: | 「1. はじめに: 微生物型ロドプシンとは」アメリカ西海岸, サンフランシスコ周辺の沿岸地域には製塩のための広大な塩田が広がっているが, 古くからこの塩田の水がしばしば赤紫色に染まる現象が知られている. これはこの塩田に住むHalobacterium Salinarumと呼ばれる高度好塩古細菌が繁殖したものであり, この菌がその細胞膜中にバクテリオロドプシン(BR)と呼ばれる紫色の色素膜タンパク質を大量に発現しているために見られた現象である1). その後このBRはタンパク質内部にall-trans型のレチナールと呼ばれる色素を結合し, 可視光を吸収すると, そのエネルギーを使って細胞の内側から外側へ水素イオン(H+)を輸送する, 光駆動型のH+ポンプであることが明らかにされた. そしてこのBRの発見に引き続いて, 内向き塩化物イオン(Cl-)ポンプや, 走光性のためのセンサーの他に, 遺伝子発現制御やカチオンチャネルとして働くロドプシンが続々と発見され, 現在では微生物型ロドプシンのバラエティはBRの発見当時からは予想できない広がりを見せており, その数も数千種類以上のものが明らかになっている(図1). |
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ISSN: | 0582-4052 1347-4219 |
DOI: | 10.2142/biophys.54.106 |