開心術における輸血状況の変遷: 当院での無輸血体外循環の理論と実際を中心に

NAT(nucleic acid amplification testing)の導入などにより輸血の安全性が向上し, 今日では輸血による感染症はほとんど見られなくなり, 外科手術の際にも輸血は安全だと考えられるようになってきている. しかし過去における開心術での大量の輸血は, 輸血後肝炎やGVHDなどの問題を生じ, 現在でも未知の感染症の危険や輸血反応, 免疫抑制などの副作用が存在し1)~3), 輸血は開心術後の長期の死亡率を増加させるという報告もある4). そのため開心術においても輸血は必要最小限にすべきであり, 多くの施設で積極的に無輸血手術に取り組まれ, 人工心肺回路の小型化を含めた体外...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 5; pp. 633 - 639
Main Authors 大澤, 宏, 明石, 興彦, 保坂, 茂, 多田, 祐輔, 吉井, 新平, 樋口, 浩二, 鈴木, 章司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会 2003
日本輸血学会
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ISSN0546-1448
1883-8383
DOI10.3925/jjtc1958.49.633

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Summary:NAT(nucleic acid amplification testing)の導入などにより輸血の安全性が向上し, 今日では輸血による感染症はほとんど見られなくなり, 外科手術の際にも輸血は安全だと考えられるようになってきている. しかし過去における開心術での大量の輸血は, 輸血後肝炎やGVHDなどの問題を生じ, 現在でも未知の感染症の危険や輸血反応, 免疫抑制などの副作用が存在し1)~3), 輸血は開心術後の長期の死亡率を増加させるという報告もある4). そのため開心術においても輸血は必要最小限にすべきであり, 多くの施設で積極的に無輸血手術に取り組まれ, 人工心肺回路の小型化を含めた体外循環技術の進歩5)6), トラネキサム酸やアプロチニンなどの止血剤による出血対策, 貯血式, 希釈式, 回収式などの自己血輸血法の確立, さらに輸血適応の検討により現在では無輸血開心術が高率に可能となった7)~9). 我々の施設では酸素需給状態を的確に把握した体外循環を行い, 輸血の適応決定を適正に行うことで安全に無輸血体外循環が可能となるとの理論的根拠のもと体外循環装置と回路および体外循環方法に大幅な改良を加えてきた.
ISSN:0546-1448
1883-8383
DOI:10.3925/jjtc1958.49.633